一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植栽に与える水の水質と生育障害

質問者:   会社員   S.TAMURA
登録番号2365   登録日:2010-12-14
WEB上で見つけ、はじめて質問します。
私は、地下水源開発調査や井戸工事(浅井戸・深井戸)に従事しています。
井戸水の水質は場所により大きく異なります。水質条件によって利用の幅は大きく左右されます。一般的に、地下水の利用上「鉄」「マンガン」「塩素イオン」の含有が一番の支障となります。
質問は植栽帯に与える水の水質との関係です。植栽帯(高木、低木、芝生など)の管理には大量の水が必要で、よく地下水も利用されます。植栽(できれば農作物についても)に与える水として「鉄」「マンガン」「塩素イオン」はどの程度まで許容されるでしょうか?植栽の種類などに依っても様々かと思いますが、宜しくお願いします。…「鉄」が20〜30mg/リットルもありますと、葉や芝生が酸化鉄の付着により赤茶色に着色し見苦しく、それが原因か不明ですが枯れたりする感じです。
S.TAMURA さま


 植物が生育するためには、CO2, H2O以外に無機養分として少なくとも14種の元素が必要であることが明らかにされています。ご質問にある鉄、マンガン、塩素も全て植物の生育に欠かすことのできない無機養分であり、水耕栽培でこれらの元素を全く含まない培養液で栽培すると、それぞれの元素に特有の欠乏症状がみられるようになります。しかし、植物を土壌で栽培している場合、植物の生育に必要な量が土壌に含まれていれば、灌漑水から無機養分を供給することは必要ではありません。また、微量にしか必要でない無機養分は少し過剰に吸収されると植物に障害をもたらす場合もあります。ご質問の灌漑水の鉄、塩素イオンによる生育障害もその一例です。


 従って必要とされる無機養分でも、特に微量しか必要でない無機養分については、土壌の含量、灌漑水に含まれる無機養分の量、形態(例えば、ご質問にあるFeイオンが酸化型、還元型であるかなど)など、多くのことが関与していますので、簡単に、一般的にお答えすることはできません。これらの分野については、農業上、収量に関係する非常に大切な問題ですので多くの研究があります。例えば、植物栄養―肥料の辞典(朝倉書店2002)などを参考にして、土壌と灌漑水の無機養分含量を考慮して最も適当な組み合わせを考えることが必要です。

JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2011-01-14
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