一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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グルコースの消費について

質問者:   大学院生   ムカイ
登録番号2369   登録日:2010-12-21
私は林業に関する研究をしているので、植物生理学の知識はほとんどありません。

樹木は樹体内に貯留水を蓄えているために、伐採後もしばらくは生きているといわれています。

林業で伝統的に行われている葉枯らし乾燥(伐倒後、枝や葉をつけたままで林内に放置すること)では、丸太の状態で放置するよりもグルコースの量が時間とともに減っていくことが報告されています。

ここで質問なのですが、この葉枯らし乾燥中のグルコースの減少は、細胞の呼吸以外に原因が考えられますか?

細胞の呼吸によりグルコースが消費されるというのであれば、枝を切り落とした丸太の状態でも同様にグルコースが消費されるのではないかと思うのですが、枝葉がついている方が速くグルコースが消費されるのはなぜでしょうか?
ムカイ 様


ご質問を有り難うございました。

グルコースの減少は、形式的には、(1)呼吸による消費、(2)他の物質への変換、(3)体外への排出によることが考えられます。葉枯らし乾燥中に材質が変化するでしょうから(2)の可能性も考えられますが、(1)が大きな部分を占めていることは確かだと思います。この内容はやや専門的ですので、森林総合研究所の北尾光俊博士に回答をお願いして以下のようなお答えをいただきました。ご参考にして下さい。





(北尾博士からの回答)

例えば、スギ林について、葉群の呼吸量は幹の部分の呼吸量の数倍にあたるという報告があります。一方、重量比では、葉の現存量は幹の数分の一程度しかありません。
このことは、葉における重量当たりの呼吸速度が材の呼吸速度に対して高いことを示しています。そこで、葉が残っている場合には丸太の状態に比べて大幅に呼吸量が増えることになり、全体としてグルコースの消費が促進されると考えられます。


北尾光俊(森林総合研究所・植物生態研究領域・樹木生理研究室)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤公行
回答日:2011-01-07
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