質問者:
中学生
ゆうすけ
登録番号2371
登録日:2010-12-22
はじめまして、鹿児島県の中学3年です。みんなのひろば
ツチトリモチとハイノキ科の関係について。
学校の裏山にツチトリモチがたくさん生えていました。先生はツチトリモチはハイノキ科にしか寄生しないと言っていました。
質問したいのは、なぜツチトリモチはハイノキ科だけに寄生するのか?です。
何かハイノキ科は特別な誘因物質を出しているのでしょうか?また相互の利害関係も教えて欲しいです。宜しくお願いします。
ゆうすけ君
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。返事が遅くなってごめんなさい。ツチトリモチの寄生についての研究はいろいろ調べてみましたし、寄生植物と宿主との関係を、他の植物で研究されている方にも聞いても見ましたが、質問にこたえられるような研究はないようです。しかし、他の寄生植物について明らかになっていることは参考になると思いますので、宇都宮大学や野生植物科学研究センターの米山弘一教授と、同竹内安智教授にからうかがった事を含めて説明しておきましょう。
根寄生植物は他の種の植物(宿主)の根に寄生して生育するものです。それぞれに宿主となる植物が決まっているものが多いのですが、明確な理由はわかりません。ツチトリモチはハンノキやクロキなどハンノキ属の植物を宿主とします。寄生植物が寄生を始めるのは、まず種子が発芽しなければなりません。ナンバンギセルなどのいわゆる寄生雑草は野生の条件下では、どこでも簡単に発芽するという訳ではなく、宿主があると発芽しやすいという事を考えると、なにか宿主からの情報を得て発芽は促されていると想像されます。つまり、寄生植物は種子発芽の段階で宿主を認識していると思われます。植物の根圏では様々な化学物質が根から分泌あるいは遊離されています。その種類は植物の種類によって一様ではありません。したがって、寄生植物の種子はそれぞれの宿主の根圏における宿主由来の何か特定の化学物質をあるいはいくつかの物質の組み合わせを情報として認識している事が考えられます。イネ科の農作物であるトウモロコシ、サトウキビ、イネ、ソルガムなどに寄生して被害をもたらしているハマウツボ科のストライガ属の寄生植物は、宿主由来のストリゴラクトンと呼ばれる化学物質が種子発芽刺激物質となっている事が明らかにされています。
同様な事実はトマト、タバコ、キュウリ、ニンジン、ジャガイモ、各種マメ科の植物に寄生するオロバンキ属の寄生植物についても分かっています。植物は何種類かのストリゴラクトンを根圏に分泌していますので、その組み合わせが発芽の促進に関係しているらしいことも分かってきているようです。いずれにしても、寄生植物が宿主を限定するのは、宿主が根圏に分泌しているストリゴラクトン、あるいはその他の未知の物質があるかもしれませんが、何らかの誘因物質が関わっていると考えてよいでしょう。これらの研究は現在進行中で、やがて、もっといろいろと明らかにされていくことと思います。しかし、ツチトリモチのように絶滅危惧種に近いとも考えられている植物については研究材料の入手という観点からも研究は難しいかもしれません。なお、寄生植物は一方的に寄生する方が便宜を得ていると考えてよいでしょう。もし、双方が利益を得ているなら寄生ではなくて、共生ということになります。
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。返事が遅くなってごめんなさい。ツチトリモチの寄生についての研究はいろいろ調べてみましたし、寄生植物と宿主との関係を、他の植物で研究されている方にも聞いても見ましたが、質問にこたえられるような研究はないようです。しかし、他の寄生植物について明らかになっていることは参考になると思いますので、宇都宮大学や野生植物科学研究センターの米山弘一教授と、同竹内安智教授にからうかがった事を含めて説明しておきましょう。
根寄生植物は他の種の植物(宿主)の根に寄生して生育するものです。それぞれに宿主となる植物が決まっているものが多いのですが、明確な理由はわかりません。ツチトリモチはハンノキやクロキなどハンノキ属の植物を宿主とします。寄生植物が寄生を始めるのは、まず種子が発芽しなければなりません。ナンバンギセルなどのいわゆる寄生雑草は野生の条件下では、どこでも簡単に発芽するという訳ではなく、宿主があると発芽しやすいという事を考えると、なにか宿主からの情報を得て発芽は促されていると想像されます。つまり、寄生植物は種子発芽の段階で宿主を認識していると思われます。植物の根圏では様々な化学物質が根から分泌あるいは遊離されています。その種類は植物の種類によって一様ではありません。したがって、寄生植物の種子はそれぞれの宿主の根圏における宿主由来の何か特定の化学物質をあるいはいくつかの物質の組み合わせを情報として認識している事が考えられます。イネ科の農作物であるトウモロコシ、サトウキビ、イネ、ソルガムなどに寄生して被害をもたらしているハマウツボ科のストライガ属の寄生植物は、宿主由来のストリゴラクトンと呼ばれる化学物質が種子発芽刺激物質となっている事が明らかにされています。
同様な事実はトマト、タバコ、キュウリ、ニンジン、ジャガイモ、各種マメ科の植物に寄生するオロバンキ属の寄生植物についても分かっています。植物は何種類かのストリゴラクトンを根圏に分泌していますので、その組み合わせが発芽の促進に関係しているらしいことも分かってきているようです。いずれにしても、寄生植物が宿主を限定するのは、宿主が根圏に分泌しているストリゴラクトン、あるいはその他の未知の物質があるかもしれませんが、何らかの誘因物質が関わっていると考えてよいでしょう。これらの研究は現在進行中で、やがて、もっといろいろと明らかにされていくことと思います。しかし、ツチトリモチのように絶滅危惧種に近いとも考えられている植物については研究材料の入手という観点からも研究は難しいかもしれません。なお、寄生植物は一方的に寄生する方が便宜を得ていると考えてよいでしょう。もし、双方が利益を得ているなら寄生ではなくて、共生ということになります。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2011-01-14
勝見 允行
回答日:2011-01-14