一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ニンジンの根の形成層の外側と内側

質問者:   高校生   ash
登録番号2373   登録日:2010-12-28
カタツムリに餌としてニンジンの根を与えると形成層より外側を好んで食べ、形成層より内側はほとんど食べません。硬さによる好みの違いかと調べましたが、どうもそうではなく、外側がやはり好きなようです。
ニンジンの形成層より外側と内側で成分的に何か違いがあると思われるのですが、詳しくわかりません。
ここで質問すべき内容ではないかもしれませんが、成分の違いについて詳しい方がいらっしゃいましたらよろしくお願いいたします。
ash 君


このコーナーに質問をくださりありがとうございます。

早速、マーケットで3種類のニンジンを買って来て、形成層をはさむ“皮層”の部分と“芯”の部分を別々に切り分け、噛んでみました。これだと直感しました(間違っているかも知れませんが)。皮層の方が香気が強いのです。このことが“ヤリ出せ、ツノ出せ、メダマ出せ”のセリフと結びつきました。香気は、テルペンアルコールやテルペンエステル類など、イソプレン(分子式、C5H8の炭化水素)を基本骨格とする低分子の有機化合物であるテルぺノイド(または、イソプレノイド)に由来するものだと思います。調べてみると、ニンジンの匂いには多種類の香気成分が寄与しているようです。これらの香気成分の組成や含量が、形成層の外側と内側の組織で、どのように違っているかについて調べた結果を今のところ私は知りません。

ところで、先ずはテルぺノイドに注目しましたが、テルぺノイド以外の物質や要因がこの現象に関わっている可能性も除外は出来ないと思っております。ご存知だと思いますが、形成層の外側と内側では組織の成り立ちや組織を構成する細胞に違いがあります。したがって、両者で化学組成が大きく違っていても当然です(一見しただけでも、“硬さ”を含めて、組織の構造はもちろん色も違っていることが多いですね)。

ニンジンの化学組成については、食品に関する研究分野(家政学)の方が詳しいことを知っておられると思いますので、その筋で調べて見られることをおすすめします(図書館なども)。もし必要な情報が見つからないようでしたら、お助けすることは出来るかと思います。

もし出来たら、適当な方法で調製した“香気成分の抽出物”にカタツムリが興味を示すかどうかが調べられると良いですね。



良い結果が得られることを期待しています。

JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤公行
回答日:2011-01-07
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