一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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原形質復帰

質問者:   高校生   あもち
登録番号2377   登録日:2011-01-06
今課外授業のようなものでオオカナダモの原形質復帰や原形質流動を観察しています。
オオカナダモをスクロース液で原形質分離をさせました。そのときの2つの疑問を質問します。

①分離しても流動があるのはなぜですか。また固まって流動するのはなぜですか。
②原形質復帰をさせると流動が止まるのはなぜですか。
あもち さん

みんなのひろばへようこそ!遅くなりました。
原形質流動の研究をされている大阪大学の高木慎吾先生に回答をもらいました。


柿本辰男(植物生理学会広報委員長)

 

ていねいに観察していますね。質問コーナーの検索機能を使って「原形質流動」で検索をかけると、過去の質問・回答を読むことができます。登録登録0454「原形質流動」登録登録1311「葉緑体の変わった動き」に関連する内容が含まれていますので、参考にしてください。原形質流動の軌道は、細胞膜のすぐ内側にあるアクチン繊維の束です。これに沿ってミオシンが滑り運動をしていると考えられていますが、アクチン繊維の束は、細胞壁と細胞膜とが離れても、その構造が保たれます。従って原形質流動は続きます。ただし、極端な原形質分離によって細胞壁と細胞膜とが完全に離れてしまうと、アクチン繊維の束構造がくずれることがあります。この場合は、原形質流動の軌道が乱れ、でたらめな流れ方になります。細胞質が固まったような状態になるのは、細胞質から水が奪われることにより、細胞質の粘度が高くなり、固まりやすくなるためと思われます。また、原形質分離によって細胞膜が変形し、細胞質が固まったように見える場合もあると思われます。
 

原形質復帰の時に原形質流動が止まった細胞は、その後、生きてましたか?原形質復帰が急激に起こると細胞膜が破れることがあり、その場合、細胞は死んでしまいます。当然、原形質流動も止まります。細胞膜が破れるほどでなくても、原形質復帰によって細胞膜を引っ張る方向に力がかかるため、細胞膜にあるカルシウムチャネルが開き、細胞外から細胞内へカルシウムイオンが流れ込むことによって原形質流動が止まります。ただし細胞は生きているので、細胞質のカルシウムイオンの濃度を低くする作用が働き、しばらくすると原形質流動は復活するはずです。登録登録0454の回答では、浸透圧の低い溶液から高い溶液へ移した場合(原形質分離が起こる)について述べていますが、逆の場合(原形質復帰が起こる)も同様のことが起こることを私達は確かめました。植物の細胞膜は、外液の浸透圧の変化に敏感に応答していることがわかります。

大阪大学大学院理学研究科
高木慎吾
回答日:2011-01-26
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