質問者:
会社員
ばたじゃが
登録番号2389
登録日:2011-02-04
漬物製造会社に勤めています。大根の色について
白い大根を切ると、たまに青っぽく変色している事がありますが、なぜですか?
予防する事や、調味液を工夫して変色を元に戻す事(白色に戻す事)は出来ますか?
また、漬物によく使われるような野菜(大根、白菜、茄子、胡瓜など)の特性や、生理活性物質について、まとめられた資料や本があるか教えて頂けますでしょうか?
よろしくお願い致します。
ばたじゃが さん:
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
お返事が遅れましたことをお詫びします。ご質問の担当を私がすることになりました。
ご質問はかなり特殊な現象と思いましたので、農林水産省 野菜茶業研究所の永田雅靖先生にお願いしていたところ、この問題を研究されている石川県農業研究センター・砂丘地農業試験場の池下洋一先生に伺っていただき、現状をまとめていただきました。
【永田先生のまとめ】
当所のダイコン育種の担当者経由で、現在、この問題に取り組んでいる石川農総研・砂丘地農試の池下洋一さんに連絡をとることができました。平成22年度の園芸学会北陸支部会で発表された結果をまとめますと、
1.この症状は、「青変症(せいへんしょう)」あるいは「青あざ症」と呼ばれる生理障害である。
2.青色の色素はアントシアニンと推察されるが、まだ同定されていない。
3.青色の発生メカニズムは不明。
池下らの研究により下記のことが明らかになりました。
ア)青変症の発生には品種間差がある。
イ)室温(箱内の温度が10〜15℃)に比べ、20℃で発生が多くなる。
ウ)低温(6℃前後)で貯蔵することにより、いずれの品種でも、青変症だけでなく、水浸症、ス入りも防ぐことができる。
したがって、予防は、収穫後に低温で流通させることです。
青変症が起きたダイコンで、調味液等の工夫で解決できるかどうかはわかりません。青色がアントシアニンであれば、水溶性ですので、塩によって下漬けが終わった段階で、水にさらせばある程度は抜けるかもしれませんが、そのためには薄くスライスされていないと難しいかもしれません。また、水にさらして色を抜く際に風味やうま味も抜けるのではないかと思います。現場でいろいろと工夫していただくしかないと思います。
永田雅靖(野菜茶業研究所)
池下洋一(石川県農業研究センター)
池下先生らの研究成果の要約が次のサイトで公開されていましたので参考になさってください。
http://www.iff.pref.ishikawa.jp/seika/seika_h21/kaga02.pdf
「漬物によく使われるような野菜(大根、白菜、茄子、胡瓜など)の特性や、生理活性物質についてまとめられた資料」とのことですが、野菜の特性については「農林漁村文化協会出版 農業技術大系 野菜編」をお調べなるのが最善だと思います。
「…..野菜の生理活性物質」についてはご質問の主旨をはかりかねます。植物学において「生理活性物質」とは「植物ホルモンと類似の生理活性をもつ合成薬品」を総合していう表現です。作物の栽培過程では植物成長調整剤(植調剤)と分類される農薬を含みます。
2016.05.12
この質問が切っ掛けとなって農業・食品産業技術総合研究機構の永田雅靖先生とと三重大学の寺西克倫先生とで大根青変化の研究が進められました。その結果、大根を含めアブラナ科に広く存在する4-ヒドロキシグルコブラッシンがペルオキシダーゼの働きで酸化されて青色物質に変るためと分かりました。しかし、この青色物質そのものはいくつかの酸化物の混合物のようです。この研究結果は米国化学会の専門学術雑誌に発表されました。
2017.04.04
この質問が契機となった上記の研究成果についての解説・エッセイが公開されました。
http://jspp.org/hiroba/essay/Nagata.html
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
お返事が遅れましたことをお詫びします。ご質問の担当を私がすることになりました。
ご質問はかなり特殊な現象と思いましたので、農林水産省 野菜茶業研究所の永田雅靖先生にお願いしていたところ、この問題を研究されている石川県農業研究センター・砂丘地農業試験場の池下洋一先生に伺っていただき、現状をまとめていただきました。
【永田先生のまとめ】
当所のダイコン育種の担当者経由で、現在、この問題に取り組んでいる石川農総研・砂丘地農試の池下洋一さんに連絡をとることができました。平成22年度の園芸学会北陸支部会で発表された結果をまとめますと、
1.この症状は、「青変症(せいへんしょう)」あるいは「青あざ症」と呼ばれる生理障害である。
2.青色の色素はアントシアニンと推察されるが、まだ同定されていない。
3.青色の発生メカニズムは不明。
池下らの研究により下記のことが明らかになりました。
ア)青変症の発生には品種間差がある。
イ)室温(箱内の温度が10〜15℃)に比べ、20℃で発生が多くなる。
ウ)低温(6℃前後)で貯蔵することにより、いずれの品種でも、青変症だけでなく、水浸症、ス入りも防ぐことができる。
したがって、予防は、収穫後に低温で流通させることです。
青変症が起きたダイコンで、調味液等の工夫で解決できるかどうかはわかりません。青色がアントシアニンであれば、水溶性ですので、塩によって下漬けが終わった段階で、水にさらせばある程度は抜けるかもしれませんが、そのためには薄くスライスされていないと難しいかもしれません。また、水にさらして色を抜く際に風味やうま味も抜けるのではないかと思います。現場でいろいろと工夫していただくしかないと思います。
永田雅靖(野菜茶業研究所)
池下洋一(石川県農業研究センター)
池下先生らの研究成果の要約が次のサイトで公開されていましたので参考になさってください。
http://www.iff.pref.ishikawa.jp/seika/seika_h21/kaga02.pdf
「漬物によく使われるような野菜(大根、白菜、茄子、胡瓜など)の特性や、生理活性物質についてまとめられた資料」とのことですが、野菜の特性については「農林漁村文化協会出版 農業技術大系 野菜編」をお調べなるのが最善だと思います。
「…..野菜の生理活性物質」についてはご質問の主旨をはかりかねます。植物学において「生理活性物質」とは「植物ホルモンと類似の生理活性をもつ合成薬品」を総合していう表現です。作物の栽培過程では植物成長調整剤(植調剤)と分類される農薬を含みます。
2016.05.12
この質問が切っ掛けとなって農業・食品産業技術総合研究機構の永田雅靖先生とと三重大学の寺西克倫先生とで大根青変化の研究が進められました。その結果、大根を含めアブラナ科に広く存在する4-ヒドロキシグルコブラッシンがペルオキシダーゼの働きで酸化されて青色物質に変るためと分かりました。しかし、この青色物質そのものはいくつかの酸化物の混合物のようです。この研究結果は米国化学会の専門学術雑誌に発表されました。
2017.04.04
この質問が契機となった上記の研究成果についての解説・エッセイが公開されました。
http://jspp.org/hiroba/essay/Nagata.html
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2011-03-04
今関 英雅
回答日:2011-03-04