一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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心材の沈着における色の濃淡

質問者:   公務員   ken-naka
登録番号2390   登録日:2011-02-04
スギの人工林内において作業道を作設するためにスギを伐採したところ、伐採したスギの木口面において、心材の色の濃淡が、すぐ隣り合った木でも大きく違いました。このような濃淡の違いは、どのような理由が考えられるでしょうか?
ken-naka さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。

スギ心材の色には淡い赤色、赤褐色から黒色に近い色まであり、林業分野では赤心材と黒心材とに区別しています。赤心材は材として問題ないのですが、黒心材は外見の悪さ、水分含量の違いから材として問題があるとされているため黒心形成の原因を突き止める研究がなされています。赤心の多い品種、黒心の多い品種があることから遺伝的要素もあるようですが、同じ品種でも生育条件の違いによって黒心発生の頻度が違うことから土壌環境(水分、灰分含量の違いなど)が大きく影響しているようです。赤心は弱酸性、黒心は弱塩基性といった違いがあり、それに合致するように黒心は灰分が赤心に比べて多く、灰分の主成分はカリウムと測定されています。実際、斜面に生育するスギ人工林心材色は、斜面下部の方が上部よりも赤心が多く、土壌のカリウム含量は上部が下部よりも多いことが分かり、これらをまとめると、カリウム含量の多い途上に生育するスギでは心材のカリウム含量が高く、黒心生成率が高い。反対にカリウム含量の少ない土壌のスギでは心材のカリウム含量が少なく、赤心形成率が高い、という結果が報告されています。


植林地の多くは斜面で、その傾斜も、日照量は多様に違います。このような複雑な地形では温度、水分、肥料分などの分布はきわめて狭い範囲で変化に富んでいます。したがって、隣に生育する2本のスギを比べてもそれらの生育条件は違っています。これらの違いが、心材の色形成に影響を与えた結果、濃淡の違いができあがったものと考えられます。


回答は九州大学の研究者による次の研究成果をもとにしました。
詳細はご覧になってください。


1.斜面における黒心形成とカリウム2003
http://ci.nii.ac.jp/els/110006278999.pdf?id=ART0008296043&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1297143368&cp

JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2011-02-16
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