一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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樹皮の剥がれる仕組み

質問者:   会社員   コウタ
登録番号2394   登録日:2011-02-10
今日お客様から質問されたのですが、「アカガシの樹皮がうろこ状に剥がれるのはなぜですか?」と聞かれました。恥ずかしながら答えることが出来ませんでした。よくよく考えて見ると、樹種ごとに樹皮の剥がれ方に特徴があると思うのですが、どういう仕組みで樹皮が脱落しているのですか?またなんで、樹種で剥がれ落ち方が異なるのですか?
コウタ様

みんなのひろばへのご質問有り難うございました。常日頃、樹木と接しておられるコウタさんには分かりきったことと思いますが、このコーナーを訪ねて下さる皆さんにも分かるようにと、樹皮についての説明から始めます。樹木の幹には形成層(維管束形成層)というものがあって、内側に根で吸収した水の輸送を担う木部、外側に葉で同化した産物の輸送を担う篩部を作っています。広い意味での樹皮はこの形成層の外側の部分を指します。若い幹の一番外側には表皮があって幹を保護していますが、木部の形成が進み、幹が太くなってくると、表皮は幹の肥大に見合うだけ面積を広げることが出来ず、死んでしまいます。表皮が死ぬと、それより内側の細胞が分裂を始めコルク形成層が形成され、コルク形成層の働きでコルク層が形成されます。コルク層が形成されると、コルク層の外側の組織は死んでしまいます。狭い意味での、そして一般的に考えられている樹皮は死んだ篩部とコルク層を含む部分を指しています。コルク形成層とコルク形成層によって作られた部分を合わせて周皮と呼びます。周皮は表皮に代わって幹の保護の役目を果たします。周皮には、周皮の内側と外側とのガス交換に働く空気の通り道のような、皮目というものが作られます。皮目の外側の端は幹の外側に隆起しているので、幹の外側から見る事ができます。皮目の位置、分布は樹種によって異なります。

樹皮の剥がれる話にはいります。体の一部が本体から離れることを器官脱離と云います。器官脱離でなじみが深いのは葉の脱離でしょう。葉の脱離には生理的(積極的)な過程が含まれています。葉の付け根(葉柄の基部)に離層が形成され、離層に接する細胞が、離層側に細胞壁を分解する酵素を分泌する事によって離層の細胞の細胞壁を弱くし、葉を落ちやすくするのです。樹皮の脱離にはこのような生理的な過程は含まれておりません。幹の肥大と樹皮の乾燥による収縮により脱離が起きます。樹皮の剥がれ方ですが、コルク層の厚さ、広がり具合(面積)、皮目の配置などが関係するようです。樹木により、剥がれ方が異なるのは、このようなことが樹木により異なるからと思います。アカガシの樹皮がうろこ状に剥がれるのも、このようなことが関係しているのだろうと思いますが、具体的にどのように関係しているのかについては分かりませんでした。
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2011-03-04
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