一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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花粉中の微粒子

質問者:   教員   シルバ
登録番号2397   登録日:2011-02-23
ブラウン運動の名は、ブラウンが1827年、吸水した花粉が破裂し、中から出てきた多数の微粒子がランダムな運動をしていることを発見したことに因むとのことです。この「花粉が破裂して出てきた多数の微粒子」とは何なのでしょうか?
シルバ様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
Robert Brown が観たのはアカバナ科クラーキア属のClarkia pulchella (ホソバノサンジソウ:細葉の山字草)の花粉ですが、残念ながら私は観た事がありません.また、Brownの原報告も読める機会がありませんでしたので、彼が観察した物は実際にどういう状態のものだったかは分かりません。したがって、ここでは、一般に花粉の中にそのような粒子状の物は存在するかどうかという事について、説明する事にします。
花粉はアレルギー症の原因ということで、その関係の研究は沢山報告があります。それらによると、多くの花粉は濡れたりすると内容物を放出します。そのとき、細胞質の30nm〜4.5μmの破片ができるそうです。また、球状の顆粒状のものも放出されるので、やはり、なにか微細な球状顆粒が観られるのは確かでしょう。 ご存知だと思いますが、花粉は雄性の配偶体ですから、成熟した花粉の中には花粉自体の栄養細胞と生殖細胞がふくまれます。これら花粉内含有物についての微細構造的観察や化学的解析は報告も多くあります。電子顕微鏡の観察によると、他の生物の諸細胞でも観られる様ないわゆるelectron-dense bodiesがやはり観察されます。大体球状ですが、サイズはまちまちで、その実体についてはまだはっきりしません。イタリ−の CAIOLA AND CANINI (2003) が細胞化学的に観察した、Hermodactylus tuberosus (アヤメ科:スネークヘッドアイリス)の花粉についての論文がありましたので、読んでみました。それによると、生殖細胞にはおそらくPとCaを多く含むフィチン酸からできている大きいオスミュウム染色性の球状粒子がみられること、栄養細胞の細胞質には、液胞に関連のある不飽和脂肪酸の脂性液滴、形やサイズの不規則な大きいCaを含む脂性粒子、顆粒化した糖脂質と考えられるもの及びPとCaに富んだ小さいフィチン顆粒と推定されるものが観察されました。これらの顆粒は脂性のもののようですので、花粉が水の中で破裂すると、恐らくこれら顆粒がそのまま水中に分散するのでしょう。水中に分散された顆粒の実体を直接調べた仕事はあるかもしれませんが、今の所分かりません。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2011-03-08
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