一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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桜の花弁の発芽抑制について

質問者:   高校生   さくら
登録番号2406   登録日:2011-03-10
桜の花弁が他の植物の発芽を抑制するということを聞いたのですが、もしその効果を用いて桜の花びら(若しくは成分)を土壌に散布した場合、苗から育てたものであればきちんと生育することは可能ですか?
また、その桜に含まれている発芽抑制成分はどのようなものなのか教えてください。
さくら さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
「桜の花弁が他の植物の発芽を抑制するということを聞いたのですが、」とありますが、単なる伝聞なのか根拠のある話なのか分かりません。私はサクラの花弁が発芽を阻害する、種子発芽を阻害する物質を含んでいるという話、研究結果を聞いたことはありません。しかし、植物の葉、茎、根、果皮などには種子発芽を抑制物質が含まれる例はたくさんあります。その多くは、アブシジン酸(植物ホルモンの1つ)、フェノール系物質、アルカロイド類、サポニン類、テルペン類などで、植物の種、器官・組織、季節などによって違った物質が原因となっています。サクラ花弁のフェノール性物質は色の基であるアントシアニンですが、アントシアニン自体には発芽阻害作用はないかあってもきわめて少ないうえ、花弁のアントシアニン含量はきわめて少ないので、地面一面にサクラ花弁が敷き詰められたほどでも他の植物の発芽を阻害する可能性は低いと思います。良く知られていることは、液果などの果肉や乾果の果皮には発芽阻害物質が含まれていることが多く、それらを除くと早く発芽します。また、根からも他の植物の発芽、生長を抑制する物質をだしている例もあります。これらのことは種子の散布、生育域の確保、拡大といった生態的な意味があるとされています。
これらの発芽阻害成分は土壌に長時間おかれれば土壌内微生物などで分解されますので、一時期は阻害効果があってもやがてはその効果がなくなるのが普通です。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2011-03-25
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