一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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美味しいトマトの見分け方『お尻の星』

質問者:   会社員   新規就農1年生
登録番号2426   登録日:2011-04-29
近々、脱サラして新規就農しようとしているものです。

先日、研修先の農家で美味しいトマトの見分け方について教わりました。

①皮表面に斑点がないものが美味しい
②ヘタの緑が濃いものが美味しい
③実のお尻(ヘタの反対部分)に、白い星印がはっきりと入っている方が美味しい

①はいろんなHPに記載されているので、おおよそ理解できましたが、
図書館の本にも『がくの緑が濃いものが良い』『星がついているものが完熟』という記載はあるものの、理由が書かれていません。

お知恵を拝借したく存じます。
よろしくお願いします。
新規就農1年生 さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
「美味しさ」は人の好みも含めたくさんの要素が関係しているものですので、果菜類の「美味しさ」を植物学的に表現することはできません。そのため「美味しいトマト」と「お尻の星」と関係があるのかないのかを植物学的に説明することはできません。しかし、「お尻の星」は何だろうと思いいろいろ調べてみました。信頼できる記載を見つけることができませんでしたので、「お尻の星」がはっきり出ているトマトとそうでないトマトを買ってきて調べてみました。結論は、果皮直下に近づいた維管束でした。トマトの果実を輪切りにするといくつかの部屋に分かれていることが分かります。部屋の中にはジェリー状の組織にくるまれ種子があります。部屋の壁に相当する組織は、外縁にあたる果皮、隔壁と中心にある軸柱となっています。茎からの維管束は、果皮の表皮の下に円周上に並んでいるものと、軸柱に円形に並んでいるものがありますが、これらはつながっています(地球の経線が極から中心部にも入り込んだようなものです)。果実の頂上付近(お尻)にある維管束の幾つかは表皮直下にちかづいていて、これが外から見た星の線に相当します。果実の部屋の数は、トマト原種では2つです(ミニトマトは原種に近いので2室が多い)が大玉のトマトでは数室から8、9室あり、隔壁はそれだけ多くなっています。隔壁と果皮がつながる部分にある維管束が表皮直下に近づいているように見えましたが、確実にそうだとは言い切れないものでした。結局、お尻の星は維管束の幾つかが果皮に近づいているので、果皮をすかして「星形」に見えるものでした。どうしてそうなるのかは分かりません。少しばかり無理な推理をすると、一般に、糖度の高いトマトは「美味しい」と言われ、水分供給を少なくなると糖度が増すことも知られています。その結果、果実の水分含量が微妙に少なくなって、維管束が「浮いて」見えるのかもしれません。ちなみに、「お尻の星」がなくても完熟していて十分「美味しい」トマトもあることも知っておいてください。
『がくの緑が濃いものが良い』のは新鮮だと言うことではないでしょうか。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2011-05-02
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