一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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酵母菌のアルコール発酵について

質問者:   一般   さんちゃん
登録番号2444   登録日:2011-05-24
ご質問させていただきます。
酵母菌はアルコール発酵でアセトアルデヒドを還元してエタノールとNAD+をつくりますが,この逆の反応もできるのでしょうか?
また,できるのであれば,どのようなときに行うのでしょうか?
お忙しい中,お手数をおかけいたしますがよろしくお願いしたします。
さんちゃん 様

ご質問をありがとうございました。


ご存知のように、酵母菌の営むアルコール発酵の最後の段階は、アセトアルデヒドとアルコールが下記の式に基づいて行う相互変換の化学反応です。この反応を触媒する酵素はアルコールデヒドロゲナーゼ(アルコール脱水素酵素またはADH)と呼ばれています。


アセトアルデヒド(CH3CHO)+還元型NAD(NDAH)+H+ ←― 
→ エタノール(CH3CH2OH) + 酸化型NAD(NAD+)



一般に、酵素の存在は反応の速度にとっては決定的ですが、反応が全体として右方向に進むか左方向に進むかは、反応系を構成する成員(この場合、アセトアルデヒド、アルコール、NADの酸化型及び還元型、H+)の相対濃度によって決まります。醸造などの現場ではアルコール濃度が20%近くに達することもあり、また、活発に発酵が進んでいる条件ではアルデヒド濃度が500mg/l 程度にも達することがあるようです。したがって、反応の方向性とは別の話ですが、酵母は高濃度アルコールと有害物質であるアルデヒドによるストレスに曝されて生きているように見えます。おそらく、これらのストレスに耐える巧妙な仕組みを備えているのでしょう。

アルコールデヒドロゲナーゼはヒトにも備わっており、その作用に関係する話題の一つは、飲食によって体内に摂りこまれたアルコールのアセトアルデヒドへの分解反応のこと(アルコールの分解産物としてのアルデヒドの蓄積“二日酔い”の話し)です。

いくぶん余計なことを書きましたが、ご質問のポイントに絞れば、“反応系を構成する成員の相対濃度の条件次第では、逆の反応も起こり得る”ということになります。

JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤公行
回答日:2011-05-31
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