質問者:
小学生
うーたん
登録番号2466
登録日:2011-06-19
私は今、水耕栽培と土でトマトをプランターで育てています。土で育てているトマトには肥料を2週間おきに与えています。水耕栽培では、特別な装置は使わずに、ヒヤシンスを育てるように液肥をためて、液肥が少なくなったら足して、液肥に根がふれるようにしています。水耕栽培のトマト
おじいちゃんが、トマトに肥料を与えすぎると茎ばかりが太くなって実もつきにくい、と言っていました。でも水耕栽培では、いつも肥料に浸かっている状態になっていても、茎が太くなったりもせず、実がいくつも育っています。液肥にずっと浸かっていても、肥料が多すぎる状態にならないのはなぜですか?
うーたん さん:
いつもみんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
うーたん さんのご質問は、「なるほどな」と思うようなもので私たちにもとても勉強になっています。
このご質問も面白い点をついていると思います。少し長くなりましたが、ゆっくり読んでください。
トマトに限らず作物を栽培するときに与える肥料の量は作物の生長に大きな影響を与えます。肥料は植物の身体をつくる材料となるものですから、足りなければ成長が遅くなりますし、生長量も少なくなります。肥料が多ければそれだけ成長する速さも量も大きくなります。しかし、あまりたくさん与えすぎると逆に害作用が出て枯れてしまうこともあります。おじいちゃんの言われたことは正しいのですが、それは土に栽培したときに特に現れやすいものです。
水耕栽培ではいつも同じ濃度の液肥を与えていますね。水耕液が減った分は植物の吸収によるものと水耕液表面から蒸発した分ですが、後のお話しする土壌からの蒸発分よりは遙かに少ないものです。ですから、減った分だけ、液肥を与えても全体としての肥料の濃度はあまり変化しません。しかも液肥の濃度はトマトにとって一番適しているかそれより少しばかりうすい濃度になるようになっているはずです。ですから、植物の側から見るといつも同じ組成、同じ濃度の肥料が与えられていることになります。
ところが土耕栽培では少しばかり事情が違ってきます。土は、落ち葉、枯れ枝、死んだ根などが腐った有機物や細かく砕けた岩石、岩石がさらに細かくなった粘土などが混じり合ったものです。細かい岩石(表面に凹凸が多かったり小さな孔が沢山あいたりしています)や粘土、腐植した有機物片などの土壌粒子は、水に溶けている肥料分の一定割合を吸着(粒子の表面にチッソ、リン、カリウムなどの肥料成分がゆるく結合すること)し、残りは土壌粒子の周りにある水に溶けた状態になっています。土壌粒子の間にある水は次第に下部に浸透して、空気がはいってきます。そうすると濡れていた土壌表面はとても大きく、そこから水は蒸発して土壌粒子表面の水に溶けている肥料分の濃度が高くなり、その分さらに多くの肥料分が土壌粒子に吸着されます。植物が吸収できる肥料分は水に溶けているもので、植物が肥料分を吸収するとこの水に溶けた肥料の濃度は少し低くなり、それに相当する量だけ土壌に吸着されていた肥料分が溶けだしてきます。このような状態の土に前と同じ濃度の肥料液を与えつづけると、土壌に吸着する量や水に溶けている肥料の濃度が高くなる傾向があります(土壌に与える肥料の濃度に比べて高くなることです)。つまり植物は次第に、濃度の高い肥料を与えられたことになり成長が盛んになってきます。
今までの説明は、バランスのとれた肥料組成(例 化成肥料)について考えたものです。おじいちゃんの言われたことにはもう一つ別の意味があるように思います。それは、「肥料」といわれるものには単肥といって硫安(チッソ分だけ)とか過燐酸石灰(リン酸分を主)、塩カリ(カリだけ)のように三大要素(チッソ、リン、カリ)のうち1つだけを含むものがあります。植物の栽培でチッソ分を多く与えると茎や葉が大きくなることが知られていて、硫安などのチッソ肥料を多く与えると葉菜類にはよいのですが、花の咲きが悪くなり、果実(種子)を利用する種類(トマトはその1つです)では具合の悪いことになります。
いつもみんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
うーたん さんのご質問は、「なるほどな」と思うようなもので私たちにもとても勉強になっています。
このご質問も面白い点をついていると思います。少し長くなりましたが、ゆっくり読んでください。
トマトに限らず作物を栽培するときに与える肥料の量は作物の生長に大きな影響を与えます。肥料は植物の身体をつくる材料となるものですから、足りなければ成長が遅くなりますし、生長量も少なくなります。肥料が多ければそれだけ成長する速さも量も大きくなります。しかし、あまりたくさん与えすぎると逆に害作用が出て枯れてしまうこともあります。おじいちゃんの言われたことは正しいのですが、それは土に栽培したときに特に現れやすいものです。
水耕栽培ではいつも同じ濃度の液肥を与えていますね。水耕液が減った分は植物の吸収によるものと水耕液表面から蒸発した分ですが、後のお話しする土壌からの蒸発分よりは遙かに少ないものです。ですから、減った分だけ、液肥を与えても全体としての肥料の濃度はあまり変化しません。しかも液肥の濃度はトマトにとって一番適しているかそれより少しばかりうすい濃度になるようになっているはずです。ですから、植物の側から見るといつも同じ組成、同じ濃度の肥料が与えられていることになります。
ところが土耕栽培では少しばかり事情が違ってきます。土は、落ち葉、枯れ枝、死んだ根などが腐った有機物や細かく砕けた岩石、岩石がさらに細かくなった粘土などが混じり合ったものです。細かい岩石(表面に凹凸が多かったり小さな孔が沢山あいたりしています)や粘土、腐植した有機物片などの土壌粒子は、水に溶けている肥料分の一定割合を吸着(粒子の表面にチッソ、リン、カリウムなどの肥料成分がゆるく結合すること)し、残りは土壌粒子の周りにある水に溶けた状態になっています。土壌粒子の間にある水は次第に下部に浸透して、空気がはいってきます。そうすると濡れていた土壌表面はとても大きく、そこから水は蒸発して土壌粒子表面の水に溶けている肥料分の濃度が高くなり、その分さらに多くの肥料分が土壌粒子に吸着されます。植物が吸収できる肥料分は水に溶けているもので、植物が肥料分を吸収するとこの水に溶けた肥料の濃度は少し低くなり、それに相当する量だけ土壌に吸着されていた肥料分が溶けだしてきます。このような状態の土に前と同じ濃度の肥料液を与えつづけると、土壌に吸着する量や水に溶けている肥料の濃度が高くなる傾向があります(土壌に与える肥料の濃度に比べて高くなることです)。つまり植物は次第に、濃度の高い肥料を与えられたことになり成長が盛んになってきます。
今までの説明は、バランスのとれた肥料組成(例 化成肥料)について考えたものです。おじいちゃんの言われたことにはもう一つ別の意味があるように思います。それは、「肥料」といわれるものには単肥といって硫安(チッソ分だけ)とか過燐酸石灰(リン酸分を主)、塩カリ(カリだけ)のように三大要素(チッソ、リン、カリ)のうち1つだけを含むものがあります。植物の栽培でチッソ分を多く与えると茎や葉が大きくなることが知られていて、硫安などのチッソ肥料を多く与えると葉菜類にはよいのですが、花の咲きが悪くなり、果実(種子)を利用する種類(トマトはその1つです)では具合の悪いことになります。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2011-06-27
今関 英雅
回答日:2011-06-27