一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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シアノバクテリアは嫌気性生物なのか、好気性生物なのか?

質問者:   教員   額鷹
登録番号2467   登録日:2011-06-21
地球大気が分子状酸素を含まない状態から酸素を含む状態に変化した原因は、シアノバクテリアが出現、酸素放出型の光合成を行うようになったからとされています。ということは

1)出現した当時のシアノバクテリアは分子状酸素に耐える機構はあったはずですが、分子状酸素を利用する呼吸(酸素呼吸)は行えなかったと考えて良い、つまり、嫌気性生物と考えてよいということでしょうか?

2)現生のシアノバクテリアは有機物を酸化してATPを生産する機構(呼吸)をもつのだろうと思いますがが、それは嫌気呼吸なのでしょうか? それとも酸素呼吸なのでしょうか?

3)現生シアノバクテリアは嫌気性生物なのか、好気性生物なのか、どちらと考えればよいのでしょうか?
額鷹 様

ご質問をありがとうございました。
シアノバクテリアは、酸素発生型光合成(光化学系Iと光化学系IIが機能する光合成)を営む原核生物として定義されます。ただ、生活様式(代謝系)としては、シアノバクテリアは多様な生物群を包含しており、また、その性質も環境条件によって大きく変化することがあります。

1)進化の過程でシアノバクテリアがどのようにして出現したかは不明です(狭義の光合成細菌が起源に関係していることは明らかですが)。シアノバクテリアが出現する以前から地上には低濃度ではあるが酸素が存在していて、酸素を消費(除去)する代謝系が発達していたようです。酸素を還元して水に変化させるシトクロム酸化酵素(酸素呼吸の鍵酵素)もその一つです。このような時代から機能している酸素除去系がシアノバクテリアにも備わっています。シアノバクテリアが備えている酸素呼吸の能力が、最初から備わっていたものか、その後の進化の過程で獲得されたものかは分かりません。

2)現生のシアノバクテリアには酸素呼吸の機能が備わっているようです(前述)。ただ、外部から与えるグルコースなどを取り込んで従属栄養的に増殖できるシアノバクテリアは比較的限られているようです。

3)酸素発生の機能(光化学系IIの機能)を備えることによってシアノバクテリアの細胞では、非光合成細胞と比較して、酸素濃度が一万倍程度にも高まったと見積もられています。それに伴って酸素に耐える代謝系が整備されて行ったのだと思います。酸素の存在下で生育する生物と言う意味で、シアノバクテリアは好気性生物です。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2011-07-13
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