質問者:
一般
キューリアスジョージ
登録番号2470
登録日:2011-06-28
農薬を抜こうと、前の晩にアメリカンチェリーを水につけておきました。翌朝見ると、果皮が破裂している個体が多数ありました。一方、日本の佐藤錦は同様にしてもほとんど破裂しません。破裂する、という現象は膨圧にみんなのひろば
アメリカンチェリーは水につけるとなぜ破裂する?
耐えかねた果皮の細胞壁が破壊した状態、と解釈してよいのでしょうか?またアメリカンチェリーと佐藤錦の違いは果皮の性質の違いなのでしょうか?
キューリアスジョージ様
大変回答が遅くなり、申し訳ございませんでした。サボッテいた訳ではなく、悪戦苦闘していたのです。まず、図書館へ。そこでサクランボについて「成熟期の降雨は実割れをおこし・・・」(最新園芸大事典・誠文堂新光社)に出会いました。ご質問の内容と違うなあと戸惑い、まずは、自分で確かめて見ようとしました。次に、山形大学農学部の三橋 渉先生を通して、サクランボの専門家に教えを請うことにしました。まず、三橋先生から頂いたメールを転送する形で載せ、ついで私の観察の結果と、三橋さんからのメールの内容や、私の観察結果をもとにした私の推論を書いて見ます。
(1) 三橋 先生からのメール
サクランボ果実の裂果現象は十分に成熟した果実で観察され、果実中の糖分含量が重要なようです。余分な果実を間引いたり、十分に肥料を与えるなどして果実に十分な栄養が与えられると結果的に果実の糖含量が増え、雨など外界から水分が与えられると裂果してしまいます。裂果時には果実内の個々の細胞が膨張するのが始まりと考えられますが、細胞自身が破砕されるのかどうか等は専門家の意見に待ちたいと存じます。裂ける場所は法則性があり、果柄とは逆側の果実の先端部にある溝部分が裂けることが多いようです。裂果現象の起こり易さには品種間で差が認められ、これも基本的には果実の糖含量が高い品種で裂果が起こり易いと言われています。裂果は十分に成熟した果実でみられ、発達中の果実での報告はありません。成熟果実では糖分も十分に高まり、また、果皮部分も老化が始まっているのではないでしょうか。
ところで、アメリカンチェリーと佐藤錦の差ですが、上記のように十分に成熟した実で起こる現象なので、高価な佐藤錦での観察は難しいかも知れません。スーパーマーケットで入手できる佐藤錦は実も小ぶりで輸送し易いものが多いように思います。手積み販売されている Lクラス以上のものでは実も大きく、真っ赤に熟れていますので、これだと水に浸した場合、かなりの果実で裂果現象がみられる可能性があると思います。
(2) 私の観察結果
アメリカンチェリー、山形県産サクランボ(佐藤錦ではありません)、ともに1パックずつ買って、水に浸してみました。アメリカンチェリーの裂果率は 30% でしたが、山形県産のサクランボの裂果率は 0% でした。日を置いて再び、同じ実験をした所、アメリカンチェリーの裂果率は 70% でした。裂果した物としなかった物とで甘みに違いはありませんでした。浸した水に色素が漏れ出していましたが、これは、表皮細胞が破壊された結果だと思います。2回目の実験では、山形県産サクランボも約 15 % が裂果しました。割れ方はいろいろで、果柄を中心に同心円状に割れるものも、放射状に割れるものもありました。山形県産サクランボの場合、割れているものは、割れなかったものにくらべて、確かに甘く、三橋先生メールの内容に合っていました。
(3) 私の推論
裂果はアメリカンチェエリーでは表皮細胞の弱さが原因で起こり、国産のサクランボでは糖度が高まり、吸水力が増大することにより起きるのだと思います。
大変回答が遅くなり、申し訳ございませんでした。サボッテいた訳ではなく、悪戦苦闘していたのです。まず、図書館へ。そこでサクランボについて「成熟期の降雨は実割れをおこし・・・」(最新園芸大事典・誠文堂新光社)に出会いました。ご質問の内容と違うなあと戸惑い、まずは、自分で確かめて見ようとしました。次に、山形大学農学部の三橋 渉先生を通して、サクランボの専門家に教えを請うことにしました。まず、三橋先生から頂いたメールを転送する形で載せ、ついで私の観察の結果と、三橋さんからのメールの内容や、私の観察結果をもとにした私の推論を書いて見ます。
(1) 三橋 先生からのメール
サクランボ果実の裂果現象は十分に成熟した果実で観察され、果実中の糖分含量が重要なようです。余分な果実を間引いたり、十分に肥料を与えるなどして果実に十分な栄養が与えられると結果的に果実の糖含量が増え、雨など外界から水分が与えられると裂果してしまいます。裂果時には果実内の個々の細胞が膨張するのが始まりと考えられますが、細胞自身が破砕されるのかどうか等は専門家の意見に待ちたいと存じます。裂ける場所は法則性があり、果柄とは逆側の果実の先端部にある溝部分が裂けることが多いようです。裂果現象の起こり易さには品種間で差が認められ、これも基本的には果実の糖含量が高い品種で裂果が起こり易いと言われています。裂果は十分に成熟した果実でみられ、発達中の果実での報告はありません。成熟果実では糖分も十分に高まり、また、果皮部分も老化が始まっているのではないでしょうか。
ところで、アメリカンチェリーと佐藤錦の差ですが、上記のように十分に成熟した実で起こる現象なので、高価な佐藤錦での観察は難しいかも知れません。スーパーマーケットで入手できる佐藤錦は実も小ぶりで輸送し易いものが多いように思います。手積み販売されている Lクラス以上のものでは実も大きく、真っ赤に熟れていますので、これだと水に浸した場合、かなりの果実で裂果現象がみられる可能性があると思います。
(2) 私の観察結果
アメリカンチェリー、山形県産サクランボ(佐藤錦ではありません)、ともに1パックずつ買って、水に浸してみました。アメリカンチェリーの裂果率は 30% でしたが、山形県産のサクランボの裂果率は 0% でした。日を置いて再び、同じ実験をした所、アメリカンチェリーの裂果率は 70% でした。裂果した物としなかった物とで甘みに違いはありませんでした。浸した水に色素が漏れ出していましたが、これは、表皮細胞が破壊された結果だと思います。2回目の実験では、山形県産サクランボも約 15 % が裂果しました。割れ方はいろいろで、果柄を中心に同心円状に割れるものも、放射状に割れるものもありました。山形県産サクランボの場合、割れているものは、割れなかったものにくらべて、確かに甘く、三橋先生メールの内容に合っていました。
(3) 私の推論
裂果はアメリカンチェエリーでは表皮細胞の弱さが原因で起こり、国産のサクランボでは糖度が高まり、吸水力が増大することにより起きるのだと思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2011-07-14
柴岡 弘郎
回答日:2011-07-14