一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ヒマワリが放射性物質を吸収するか

質問者:   一般   下北沢
登録番号2472   登録日:2011-06-30
原発事故後、地中の放射能を吸収するため、汚染地ではヒマワリを栽培していると報道されています。
ヒマワリが持つどのような機能により、放射性物質が吸収されるのでしょうか?
チェルノブイリを例にしているようですが、ロシアの風土ではヒマワリでも、福島の風土に適した植物があってもよさそうなものですが、ヒマワリ以外の優れた植物は考えられませんか?
下北沢 さん

ご質問をありがとうございます。
先日、TVで、農林水産大臣がヒマワリの種を蒔いている画面が放映されておりました。

セシウムやストロンチウムなどの放射性物質は、カリウムやカルシウムなどの栄養物と同じように、イオンの形で植物体に吸収さるものと考えられます。
一般に、細胞の外壁となっている原形質膜は脂質(脂質二重膜)で作られているため、イオンなどの電荷を帯びた物質を通しにくい特性をもっています。しかし、植物細胞は、エネルギーを消費することによって、イオンの形の栄養物(例えば、硝酸イオン、カリウムイオン、リン酸イオンなど)を吸収する機能を備えております。この機能を担うのが“輸送体(膜に存在するタンパク質複合体)”です。輸送体によるイオンの取り込みは、一般に、電荷・形・大きさなどイオンの特性により選択的に行われますが、輸送体によるイオン識別にはある程度の幅があるようです。例えば、アルカリ金属であるカリウムの輸送体は周期律表で同じ列に位置するセシウムをも輸送する傾向にあることが知られています。他方、輸送の効率はイオンの化学的な特性によって決まりますので、同位体の間(例えば、非放射性のセシウム133と放射性のセシウム137の間)で植物による吸収に差があるとは考えにくいと思われます。

ところで、植物によるセシウムやストロンチウムの吸収に関しては北海道大学の渡部博士が詳しく調べられ、ご自分のホームページ
http://www.geocities.jp/watanabe1209/)に公開されております。ヒマワリに含めて幾つかの植物についてデーターが示されておりますので、ご参考になさってください(ヒマワリが特に優れてセシウムを吸収し、蓄積するとは言えないようです)。
なお、言うまでもないことですが、植物体によって吸収された放射性物質の最終的な処理の問題が別の課題として残されていますね。植物の選定にあたっては、そのようなハンドリングの容易さの視点も重要になって来ると思います。残念ながら、福島ではこの植物が良いとお答えする知識はございません。

この質問コーナーの#2454にも関連したQ/Aが掲載されておりますので、ご参考になさって下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2011-07-13
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