一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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光合成におけるクロロフィル

質問者:   高校生   ぴーたーぱん
登録番号2477   登録日:2011-07-04
クロロプラスト中の大部分のクロロフィルは光を集めるアンテナクロロフィルである。吸収された光エネルギーは,アンテナクロロフィル間を励起エネルギーとして移動し、アンテナクロロフィルよりも励起エネルギーが低い、反応中心クロロフィルで集められる。反応中心クロロフィルは二量体で存在する。吸収された光エネルギーの通り道は決まっているのか。反応中心クロロフィルは何故二量体で存在するのか。
お願いいたします。
ぴーたーぱん さん

「光合成」の色素系について詳しくご存知ですね。
どのような仕組みで色素分子の間で(励起)エネルギーが受け渡されるかについて、調べてみられることをお勧めします。

(A)光(励起)エネルギーの通り道:
励起エネルギーが色素分子間を伝達される効率(確率)は、関係する分子のエネルギーレベル(吸収スペクトルと蛍光スペクトルの関係)に加えて、分子間の位置関係(距離や配向)に大きく依存します。最近の研究により、光合成細菌(紅色細菌や緑色細菌)やシアノバクテリア(藍色細菌)などの光合成系について、機能を担う色素タンパク質複合体中での色素分子の配置が結晶のX線構造解析などによって明らかになってきました。これらの結果から、(バクテリオ)クロロフィルなどの色素分子間のエネルギーの移動経路について具体的に推測することが可能です。励起エネルギーの移動に関して、“ある分子から別の分子への特定の通り道”や、“何処へでも横流しできるフレキシブルな道” などの存在を示唆する分子の配置を構造から読み取ることができます。ただし、実際には、反応に伴う変化(構造の動態)があると思われますので、正しく理解するには更なる解析が必要です。

(B)ニ量体形成の理由:
反応中心(光化学反応中心)色素の機能は、(1)アンテナ色素系から励起エネル
ギーを受けとること、(2)近接する分子に電子を渡すことにより自分自身は酸化されて、電子伝達反応を駆動することの二つです。これまでに構造が解明された反応中心の場合、何れも(バクテリオ)クロロフィルの二量体が構造の中心に位置しており、他の証拠から、これらが反応中心として機能していることが示されています。(バクテリオ)クロロフィルは二量体を形成することにより、励起状態のエネルギーレベルを低下させ(長波長に吸収が移動し)、アンテナ系の色素から励起エネルギーを受け取りやすくしています(エネルギーの“落とし穴(トラップ)”)。また、一般論として、二量体を形成することにより酸化還元電位を変化させ、隣接分子への電子供与の容易さを変えていると言えます。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2011-07-13
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