一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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光合成の実験で、葉を熱湯につけるのは

質問者:   会社員   ひい
登録番号2479   登録日:2011-07-11
アサガオの葉による光合成実験の方法とその理由

一昼夜暗室においたアサガオの鉢植えをよく晴れた翌日、日のあたるところに数時間置いた。その後、葉を取り、以下の方法でヨウ素によるデンプンの検出を行った。

①熱湯に葉をつける。
②湯煎したアルコールに葉をつける。
③再び湯に葉をつける。
④ヨウ素を葉につけて反応を見る。

という実験で、①や③の湯につけるのはなぜなのでしょうか。「葉を柔らかくするため」とか「細胞壁を壊し、アルコールやヨウ素が葉に入りやすくするため」とか「デンプンが糖に変わるのを防ぐため」などいろいろあちこちに書いてあるのですが、よくわかりません。
ひい様

みんなのひろば質問コーナーをご利用頂きありがとうございます。回答が遅くなり、申し訳ありませんでした。①での煮沸をした葉と、煮沸していない葉を用いて実験をしてみました。煮沸した場合は摂氏70度のアルコールに10分ほど浸けておくとクロロフィルの緑色はきれいに抜けましたが、煮沸しない場合は緑色が少し抜けた程度でした。その後水に戻した後にヨウ素ヨウ化カリウムに浸けますと、数分で澱粉が染色されましたが、緑色が残っている葉では観察が困難でした。③での湯に葉をつける、という処理に関しては、水でも問題ありませんでした。つまり、煮沸した葉では、アルコール処理でクロロフィルの溶出が促進されるため、というのがもっとも適切と考えられます。クロロフィルが溶出され易くなるのは、煮沸により細胞膜や細胞壁が部分的に破壊されるためと想像できます。湯につける別の理由として「デンプンが糖に変わるのを防ぐため」が正しいのかどうかについてですが、湯につけなくてもすぐに熱いアルコールに浸けるため、おそらく澱粉分解酵素は失活すると想像できます。ですので、この理由はあまり適切ではないのではないでしょうか。実際、澱粉は染まりました。
JSPP広報委員長、大阪大学
柿本 辰男
回答日:2011-08-10