一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

暑さと植物の生長

質問者:   小学生   うーたん
登録番号2480   登録日:2011-07-16
梅雨が明けて、気温が高くなったら、トマトの生長が遅くなってきたように見えました。実があまり育たなくなって、1段目や2段目に比べると小さくなってきています。そして茎の伸び方も遅くなったように感じます。トマトは日光が好きな植物なのに、なぜ遅くなるのですか?暑すぎると(気温が高すぎると)よくないのですか?
うーたん さん:

ご利用有り難うございます。
ご質問は実際にトマト栽培試験をおこなっている、野菜茶業研究所の永田 雅靖先生に回答をいただきました。トマトも故郷の環境が一番よいようですね。
 

トマトは、南アメリカのアンデス山系が原産と言われています。原産地の平均気温は、昼間20℃、夜間15℃ぐらいです。したがって、トマトの生育しやすい気温は日本なら、春から初夏ごろになります。(日本では)トマトは、春から初夏にかけて開花、結実した果実が、夏にかけて収穫時期を迎えるために、夏の野菜のイメージがありますが、(日本の)真夏の気温は、トマトが元気に育つには高すぎることがこれまでの実験から明らかになっています。夏の時期のトマト栽培は、夜間の高温を避けて、北海道、東北地方や、高原地帯など冷涼な地域で行われています。トマトの果実が大きくなるためには、光合成で蓄えた炭水化物が必要ですが、とくに夏の時期は、夜の温度が高すぎて、せっかく昼間に作った炭水化物が、夜の間に呼吸に使われてしまい、植物の生長や果実の肥大に使うことができないために、トマトの茎や葉の生長が遅くなり、果実も小さくなったものと考えられます。
また、高温では、花粉のねん性が低下するので、実ができなく(落果)なったり、赤い色素(リコペン)の生合成も抑制されるので、部分的に黄色の果実になる場合もあることが知られています。

蔬菜類の生育適温に関する試験結果がまとめられています。参考になると思います。
http://cyber.pref.kumamoto.jp/Chisan/Content/Html/yasaidukuri/chisiki04.asp

永田 雅靖 (野菜茶業研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2011-07-22