一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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クチクラを除去する方法

質問者:   教員   生物教師
登録番号2487   登録日:2011-08-01
いつも楽しく拝見しております。
私は植物の葉がどのような波長の光を透過・吸収しているのかを調べています。
ツバキなどクチクラの発達した葉のクチクラを除去して測定したいのですが、どのような方法を行えばよいのでしょうか。
生物教師 様

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
おそらく不可能ではないでしょうか。ご承知のようにクチクラは表皮細胞の外側に分泌、蓄積されるかなり頑丈で複雑な物質です。主としてC18の水酸化脂肪酸のポリエステルからなるクチンが主構造となり、クチンにさらに高級アルコールの重合体である蝋成分(wax)が沈積したもので厚い層となっています。表皮細胞の外側細胞壁との接着部分の詳細は分かりませんが強固に結合しているものです。そのため、クチクラ層だけを物理的に剥がすことはできないでしょう。また、脂溶性物質からできていますが高分子ですのでクチクラ層を溶解する溶剤も、あるかもしれませんが、使用したとすれば葉肉組織も変性しますので目的には適さないことになります。残る手段は、表皮ごと除去することですが、残念なことに厚いクチクラ層をもつツバキ、チャのような葉の表皮だけを剥がすことに成功した例を聞いたことがありません。
クチクラ層は水の損失を防ぐばかりでなく病原菌の感染に対する機能やその他の機能が明らかになりつつあり、シロイヌナズナではクチクラ層の変異株が幾つか単離されています。クチン構造体を30%程度にまで減少させる変異体やWAXの合成を抑制する変異体などが知られ、いずれもクチクラ層が薄くなっているようです。ツバキやチャにこのような変異体があれば目的の調査ができるかもしれませんが、ご自分で探すことになりそうです。お役に立たなくて申し訳ありません。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2011-08-10
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