質問者:
一般
バブ
登録番号2494
登録日:2011-08-04
今年の春にいただいたバラの苗を鉢植えにしました。みんなのひろば
バラの花の中からつぼみ
一か月ぐらい前に花が咲きましたが,その咲いたバラの花の中心からつぼみが出てきました。
つぼみは,茎が1センチほどのびて現在はふくらんでいます。
最初に咲いた花も,花びらが少し茶色になった状態でまだのこっています。
これはどんな仕組みになっているのでしょうか。
バブ様
大変興味深いご質問をありがとうございました。花の器官形成で世界的な研究者である後藤弘爾先生に回答を頂きました。回答を頂いてから、私の手違いで返信が遅れた事、おわびします。
以下は後藤先生からの回答です。
【後藤先生からの回答】
御写真を拝見したところ、「貫性花」または「貫性のバラ」と呼ばれるものだと思います。園芸用のバラで養分過多といくつかの条件がそろうと、この様な花が見られることがあるそうです。本来雌しべになるべき場所から、新たな花が作られたことによるものと考えられます。バラそのものではないのですが、シロイヌナズナという実験用の植物で調べられた結果では次のようなことが分かっています。花は、がく、花弁、雄しべ、雌しべという器官からできていますが、雌しべを作る指令を出す遺伝子(AGAMOUSといいます)は、雌しべができると新たな器官が出来ないようにする働きがあります。シロイヌナズナでは、このAGAMOUS遺伝子が突然変異を起こして機能しなくなると、雌しべの代わりに花弁やがくが次々と作られ、いわゆる八重咲きのような花になります。多くの花の八重咲きも同じような仕組みで起きていると考えられています。シロイヌナズナの場合、この八重咲きの花を短日条件(昼の長さより夜の長さの方が長い)などで育てると、頂いた写真のように2重の花になることがあります。また、AGAMOUS遺伝子の機能が完全に失われていないものでも同様のことが起きます。バラについても、同じように何らかの原因でこの遺伝子(バラのAGAMOUS遺伝子)の働きが弱まることによって、貫性花ができるのだと考えられます(バラの原種は5枚の花弁と多数の雄しべを持っています。園芸品種のバラの花弁の数が多いのは、雄しべが花弁に変化した突然変異体を人為的に選抜、育種してきたためと考えられています)。
余談ですが、「貫性のバラ」についてはドイツのゲーテ(彼は詩人として有名ですが、自然科学者でもあり、形態学の祖と呼ばれています)も、興味を持って観察しており、その結果、花の各器官(がく、花弁、雄しべ、雌しべ)は、本質的には葉と同じものである、との考えを示しています(「貫性のバラ」のなかには内側に花だけではなく、葉を生じるものがあったからです)。このゲーテの洞察は、近年の分子遺伝学研究によって、正しいことが証明されました。
後藤 弘爾(岡山県農林水産総合センター)
大変興味深いご質問をありがとうございました。花の器官形成で世界的な研究者である後藤弘爾先生に回答を頂きました。回答を頂いてから、私の手違いで返信が遅れた事、おわびします。
以下は後藤先生からの回答です。
【後藤先生からの回答】
御写真を拝見したところ、「貫性花」または「貫性のバラ」と呼ばれるものだと思います。園芸用のバラで養分過多といくつかの条件がそろうと、この様な花が見られることがあるそうです。本来雌しべになるべき場所から、新たな花が作られたことによるものと考えられます。バラそのものではないのですが、シロイヌナズナという実験用の植物で調べられた結果では次のようなことが分かっています。花は、がく、花弁、雄しべ、雌しべという器官からできていますが、雌しべを作る指令を出す遺伝子(AGAMOUSといいます)は、雌しべができると新たな器官が出来ないようにする働きがあります。シロイヌナズナでは、このAGAMOUS遺伝子が突然変異を起こして機能しなくなると、雌しべの代わりに花弁やがくが次々と作られ、いわゆる八重咲きのような花になります。多くの花の八重咲きも同じような仕組みで起きていると考えられています。シロイヌナズナの場合、この八重咲きの花を短日条件(昼の長さより夜の長さの方が長い)などで育てると、頂いた写真のように2重の花になることがあります。また、AGAMOUS遺伝子の機能が完全に失われていないものでも同様のことが起きます。バラについても、同じように何らかの原因でこの遺伝子(バラのAGAMOUS遺伝子)の働きが弱まることによって、貫性花ができるのだと考えられます(バラの原種は5枚の花弁と多数の雄しべを持っています。園芸品種のバラの花弁の数が多いのは、雄しべが花弁に変化した突然変異体を人為的に選抜、育種してきたためと考えられています)。
余談ですが、「貫性のバラ」についてはドイツのゲーテ(彼は詩人として有名ですが、自然科学者でもあり、形態学の祖と呼ばれています)も、興味を持って観察しており、その結果、花の各器官(がく、花弁、雄しべ、雌しべ)は、本質的には葉と同じものである、との考えを示しています(「貫性のバラ」のなかには内側に花だけではなく、葉を生じるものがあったからです)。このゲーテの洞察は、近年の分子遺伝学研究によって、正しいことが証明されました。
後藤 弘爾(岡山県農林水産総合センター)
JSPP広報委員長、大阪大学
柿本 辰男
回答日:2011-09-05
柿本 辰男
回答日:2011-09-05