一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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カーネーションの花糸について

質問者:   小学生   ほたてちゃん
登録番号2498   登録日:2011-08-12
 自由研究で、カーネーションの長持ち度を調べました。日数が経つにつれ、花糸が出てくるものがあったのですが、どうして花糸が出てくるのか調べても、どこにもなくわかりませんでした。
 どうしても知りたいので、よろしくおねがいします。
ほたてちゃん さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問は花き研究所の市村一雄先生に伺い、次のような丁寧な回答をいただきました。市村先生からはカーネーションの花の構造写真と雌しべ(柱頭+花柱)成長の具体的なデータもいただきましたが、そのままこの欄の回答に掲載することができませんので、文章だけでお分かりになるように修正し、市村先生のご了解を得たものです。


【市村先生の回答】
ほたてちゃんさんが花糸と呼んでいる器官は雌しべ(柱頭と花柱)ではないでしょうか。カーネーションの花をよく観察してください。雌しべの花柱は長く、一見、花糸のように見えるのではないかと思います。カーネーションの雄しべはとてもちっぽけで、退化している場合も多く花弁を取らないとなかなか見えてきません。花糸のような形態の柱頭と花柱が出てくるのは老化にともない、植物ホルモンの1つであるエチレンが生成されて、その作用で成長したためと考えられます。カーネーションでは、自然老化にともない雌しべは成長しますし、エチレンを与えると雌しべの成長は促進されます。開花後、雄しべと雌しべの新鮮重の変動を測ってみると、雄しべは2日目に若干増加するものの、その後減少しますが、雌しべは8日まで増加が続きます。つまり、雌しべは伸び続けて目立つようになりますので花糸と思われた器官は雌しべではないかと考えた次第です。
なお、カーネーションでは特に花柱はエチレン生成量が多い器官です。開花時点でACC酸化酵素(エチレンを生合成するための酵素の1つ)の活性は花糸で相当高く(ちなみに花弁では、そのときにはほとんど検出できません)、エチレンもそれなりに生成しています(5〜10nL/g新鮮重――nLは1リットルの10億分の1の体積)。その他の現象も含め、花柱から生成しているエチレンが花弁の老化に重要 な役割を果たしていると考えています。

市村 一雄(農業・食品産業技術総合研究機構 花き研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2011-08-26
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