一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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硫黄と硫黄泉水の違い

質問者:   小学生   村上 愛果
登録番号2500   登録日:2011-09-01
こんにちは。私は小6です。移動教室で日光に行きました。そこで硫黄泉は温泉に入っても、飲んでも効能があることを知りました。人間の体に良いということは、植物にも良いのではないかと思い、実際に植物を使って実験をしようとおもいました。
ペットボトル10本分の硫黄泉水を持って帰り冷蔵庫で保存しました。家にあった同じ種類の、同じくらいの大きさのガジュマルという植物で、1つには水道水、もう1つには持って来た硫黄泉水をあげることにしました。実験する前に硫黄泉について調べました。アルカリ性で、植物の成長に必要な必須元素の中にも硫黄が含まれていて、植物の酸化還元やたんぱく質の合成に関わり、光合成をするための葉緑素の生成に欠かせないものということがわかりました。実験を始めて2カ月たちましたが、どちらのガジュマルも元気に大きく育っています。でも、いくら温泉の硫黄水で調べても植物との関係は良くないことばかりでした。それは硫黄泉の中には硫化水素が含まれているものもあるからです。ここの質問コーナーにも、硫化水素と植物の関係がありましたが、読んでも難しかったです。硫黄は植物に大切なもの、でも硫黄泉水でもおなじことがいえるのか、違いはなにか調べていくうちに混乱しています。簡単な言葉で教えてください。よろしくお願いします。
村上 愛果さん

ご質問をありがとう。
2ヵ月も続く大実験をやっているのですね。
「人間の体に良いということは、植物にも良い」との考えは、栄養に関しては当たっていないと思います。植物は大気中の二酸化炭素や土壌中の無機化合物を栄養にして生長しますが、ヒトなどの動物はデンプンやタンパク質などの有機化合物を栄養にして育ちます。

硫黄は、動物にとっても植物にとっても生育に欠かすことができない物質(元素)ですが、自然界ではいろいろな形(化合物など)で存在しています。硫黄泉に見られる硫黄の華や硫化水素、土壌中の硫酸イオン、生物の体を構成する有機化合物であるタンパク質などが例としてあげられます。ところで、植物は硫酸イオンなどの無機化合物の形で硫黄を体内に取り入れますが、動物はタンパク質などの有機化合物の形で硫黄を摂取します。

硫黄泉水には水に溶けた硫化水素などの形で硫黄が含まれていますが、これらの化合物が植物の体内に取り込まれるためには微生物などの働きによって硫酸イオンなどの形に変換される必要があります。一般的に、硫化水素は動物にとっても植物にとっても有害な化合物として知られていますが、2か月もガジュマルに与え続けても水道水の場合と違いがなかったとのことですね。これは与えた量が、害を及ぼすほどには多くはなかったことによるものだと思います。ガジュマルの成長には硫黄以外にも多種類の栄養が必要ですが、それらは別に肥料として与えているのですか。水道水と温泉水で生育に差がみられなかったことは、低濃度であったために硫化水素の害作用がなかったこととは別に、(1)硫黄が植物に利用できる形になっていなかったことか、
(2)肥料の形で硫黄が十分に与えられていたことに原因があったかも知れません。

以上が私の考えです。ご参考にしてください。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2011-09-01
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