一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

キュウリからでる空気

質問者:   高校生   ゆう
登録番号2507   登録日:2011-08-22
 授業で簡易真空装置(つけものを作るもの)に縦に半分に切ったキュウリを入れて、空気を抜いていきました。そうしたら、キュウリからたくさんの小さな空気が出てきました。なぜ出てくるのか、どこから出てくるのか先生に聞いてもわかりませんでした。空気は細胞から出てくるのですか?もともとどこにあったものと考えられますか?不思議だったので質問しました。よろしくお願いします。
ゆうさん

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。おもしろい実験をしているのですね。目的はなんでしょうか。生物の実験ですか、それとも減圧に関係した物理の実験ですか。また、家庭科の授業でしょうか。ところで、漬け物をつくる簡易真空装置という商品は聞いた事がありませんが、食品を真空に近い状態(あるいは正確には減圧状態)に置くという事について二つ考えられます。真空に近い状態だと、一つは、微生物による腐敗による進行や空気中の酸素による食品成分の劣化をある程度防ぐ事ができる。この目的で真空パックにした食品が販売されていますし、自家用真空パック器も買えます。もう一つは、野菜等の食物の組織の中に周囲のソースや液体調味料などの液体を早く滲み込ませる事ができます。「漬け物をつくる」というのはこの後者のことでしょう。材料にキュウリを使ったところ、お尋ねの様な現象が見られたということですが、別にキュウリでなくても多分どんな野菜(ハクサイ、ナス、キャベツなど)を使っても、程度の差こそあれ、同じ現象が見られるはずです。気体を含んだ物体を密閉した容器の中に置き、容器の空気を抜いて行く(脱気、真空状態にしていく)と、容器の中の圧力(残ってい空気の)は外の大気の圧力よりも小さくなります(減圧される)。そうすると、容器の中の物体に含まれていた気体は抑え付けられていた圧力から解放されて、容器内にでてきます。植物の組織には沢山の間隙があり、そこには水や空気(窒素、酸素、二酸化炭素)が存在します。空気は水に溶けてもいます。また、植物が特に老化する時につくるエチレンガス(ホルモンとして働いています。エチレンについては質問コーナーで「エチレン」という語句で検索して下さい。沢山の質問と回答があります)が存在するでしょう。植物細胞自体にも多量の水が含まれています。というよりは植物細胞の成分のほとんどは水だといってよいでしょう。これらの水の中にも呼吸の産物である二酸化炭素や、呼吸のために取り込んだ酸素がとけているはずです。柔らかい植物組織を減圧したに置くと、細胞間隙にある気体はもちろんのこと、細胞から滲みだした細胞液に含まれる気体も出てくるでしょう。植物の組織を液体の中に浸けて減圧すると、これらの気体は「泡」となって出てくるのでよく分かります。この泡の中の気体の成分は大体空気だと思いますが、植物の種類や組織に状態によっても異なりますので、正確な成分は分析しないと分かりません。なお、液体の中に置かれた植物組織を減圧下に置くと、間隙から気体が出てくる代わりに、周りの液体が素早くその間隙にしみ込みます。野菜を漬け物にする場合、減圧下に置けば、漬け汁が早く滲みわたるという事だと思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2011-09-01
植物 Q&A 検索
Facebook注目度ランキング
チェックリスト
前に見たQ&A
入会案内