一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物のガンについて

質問者:   高校生   りらん
登録番号2514   登録日:2011-09-02
初めて質問させていただきます。

ふと疑問に思ったのですが、植物も癌になるのでしょうか?動物の癌の研究は盛んに行われていますが、植物についてはあまりききません。そこで、学校の先生に訊ねたところ、ウィルス感染によって植物も癌になるとのことでした。

では、老化や紫外線などによって偶発的に癌が発生することはないのでしょうか?ないとしたら動物との違いは何なのですか?教えてください。
りらん様

みんなのひろば質問コーナーをご利用頂き、ありがとうございます。すごく重要な疑問に感心しました。普段から、じっくり物事を考えておられるのでしょうね。

さて、まず動物の癌はどのようなものか考えてみましょう。増殖能力がある細胞も、増殖はうまくコントロールされています。
癌の1つ目の性質は、コントロールされずに増殖を続けるという性質です。コントロールする物質としては、様々な種類の増殖因子というものがあります。細胞のまわりに増殖因子があれば細胞が増殖するのです。ですので、増殖因子を作り続けるようになった細胞や、増殖因子の情報を伝える細胞内の仕組みが変化してしまった細胞は癌になります。
2つめに、組織にもぐり込んだり、転移するという性質があります。では、植物で癌にあたるものがあるのか、考えてみましょう。植物にときどき、こぶができることがあります。比較的大きくなるこぶとして、アグロバクテリウムと呼ばれる細菌感染によるものが有名です(ウイルスではありません。動物では癌遺伝子を運ぶ癌ウイルスがありますが。)。アグロバクテリウムは植物に感染すると植物の細胞の中にいくつかの遺伝子を注入します。その遺伝子は植物の細胞の核の中に入って、さらに、植物の染色体の中に組み込まれます。組み込まれる遺伝子として、植物の細胞増殖因子であるオーキシンとサイトカイニンを作る酵素をコードする遺伝子があるので、感染細胞はどんどん増殖してこぶになります。ただ、植物の細胞は細胞壁でくっついていますので、中に浸潤することはなく、また、転移もありません。
さて、ご質問の、紫外線や老化による癌はあるのか、ということを考えてみましょう。答えは、無い、あるいは知られていないということです。ただ、「こぶ」の中にはそのようなものがあるかもしれませんが、それを調べた研究はありません。やはり、植物はその構造上、がん細胞のようなものが出来ても、増えにくいのではないでしょうか。
JSPP広報委員長、大阪大学
柿本 辰男
回答日:2011-09-05
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