一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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早春に黄色い花が多い理由

質問者:   一般   石川 正樹
登録番号2524   登録日:2011-09-26
 キブシ、トサミズキ、アブラチャン、サンシュユ等早春には黄色い花が目立ちます。ハエ・アブが黄色を好むからと言われていますが本当でしょうか。

 類似の質問を確認しましたが、636に「パンジーの花の真ん中が黄色いのはなぜですか?」がありました。この時点(2006年)では、パンジーについては未調査、カタクリとハンゴンソウについては虫を引き付けるのが確認できたとありました。
 前回の質問から5年以上たっており、調査も進んでいると思われますので、ぜひとも回答をよろしくお願いします。
石川 正樹様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。ご質問のように確かに早春の樹々の花は黄色が多いですね。目立つのかもしれません。地域によって一概に言えないかもしれませんし、草花を加えるとどうでしょうか。正確な統計かどうかは分かりませんが、黄色い花の植物は春咲く花の50%位というのもありますし、白と黄色と30%位という数値もります。しかし、早春の花は黄色が多いというのは誰しも感じるようで、インターネットで調べてみましたが、外国でも日本でもなぜそうなるのかと疑問が持つ人が多いようです。しかし、この事を研究した例は、少なくとも私は知りません。こういう現象の説明は推測するしかないのですが、ご質問の点は間違ってはいません。もう少し、解説を加えましょう。花の色というのは人の鑑賞のためにあるのではなくて、その植物の生殖戦略と関係があることはご存知だと思います。多くの種子植物は種子を形成して次世代の繁殖に備えます。そのために受粉が必要です。花粉が運ばれてくる方法はいろいろありますが、多くは昆虫が媒介します。こういう花を虫媒花といいます。したがって、虫媒花の花にとって、昆虫が花粉を運んでくれるかどうかが、次世代に子孫を残せるかどうかを決めることになります。そのため、花は昆虫を惹き付けるために誘惑の手段を講じます。一つは香り(匂い)であり、もう一つは花の色です。ある種のランのように形という場合もあります。花と昆虫の関係は持ちつ持たれつでお互いに都合のよいように進化してきました。これを共進化といっています。早春の色彩の少ない山野で黄色というのは非常に目立つ色です。早春にいち早く活動を始める昆虫にはアブやハエの仲間が多いのですが、これらは黄色い色に敏感だといわれています。昆虫の目には単眼と呼ばれる器官があって、光を受容します。つまり、明暗と色彩です。昆虫が受容出来る光の波長は人に比べて短波長よりで、300nm〜650nm (nm: ナノメーター = 10のマイナス9乗メーター)の範囲だといわれています。だから、紫外線を含む青や紫の短波長の光には昆虫は反応し易く、赤色の様な長波長の光には反応が鈍いのです。人には黄色い花や白い花も昆虫には淡い青色に写ると思われます。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2011-10-05
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