一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ヤチダモは多湿心材であるのに、なぜ冬でも生木がよく燃えるのか

質問者:   公務員   fhan0112
登録番号2527   登録日:2011-10-03
お世話になります。
二回目の質問をさせていただきます。
今回はヤチダモです。
ヤチダモは、札幌では街路樹にも使われている樹で、普段よく目にする樹木の一つです。古い神社には、目通り直径が1.0m以上もある大木があります。私の住んでいる札幌に流れている豊平川の扇状地の下流域(石狩平野の一部)には、北海道の開拓が始まる以前には、このような大木が多くあったことがうかがえます。
そのヤチダモについてある書物に、「ヤチダモは木理がよく通っていてきわめて割りやすく、冬でも生木のままでよく燃え、また火力も強いので北海道のアイヌ民族は、このヤチダモを薪として大変重宝した。」と書かれてありました。
 一方、木材関係の書物には、「ヤチダモは辺材より心材の方が水分の多い多湿心材である」と書かれてあります。
 ヤチダモは、木理が通っていて割れやすいことが材の乾燥を早めるのか、また、特別に何か材を燃えやすくする物質を組織内に持っているのか何かの理由がないと、「冬でも生木でよく燃える」ということが、どうもすんなりと納得できません。樹木組織の観点から合理的な説明をしていただければありがたいです。
fhan0112 さん:

ご質問には森林総合研究所の藤原 健先生から次のような回答をいただきました。
参考にされた書物の勘違いか、勘違い内容の孫引きの可能性があるようです。
藤原先生が挙げられた参考文献をご参照ください。


【藤原先生のお答え】
ヤチダモが属するトネリコ属は,トネリコ節とシオジ節に大別されます。アオダモはトネリコ節,ヤチダモはシオジ節に分類されています。トネリコ属の材に共通する特徴として,木理が通直で強靱なことがあげられます。一方で,トネリコ節とシオジ節では,心材の色や含水率に違いがあるとされています。アオダモ等では,明瞭な着色心材をつくらず,含水率が低いのに対して,ヤチダモ等では褐色の多湿心材をつくるという違いがあります。参考図書等で調べてみると,生材でも燃えやすいとされている樹種は,以下の2つの参考文献ではいずれもアオダモとしています。これは,生材の含水率が低いとされているアオダモの木材の特徴とも合致しています。このため,元の質問者の方が,あるいは出典書物において,ヤチダモとアオダモを取り違えているという可能性が高いと思われます。

参考文献
日本有用樹木誌(伊東隆夫,佐野雄三,安部 久,内海泰弘,山口和穂:
ISBN978-4-86099-248-4 C0060:海青社)
道産木材データベース(北海道立総合研究機構 森林研究本部 林産試験場)URL 
http://www.fpri.hro.or.jp/gijutsujoho/doumoku-db/doumoku/doumoku-index.htm

藤原 健(森林総合研究所 組織材質研)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2011-10-05