一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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樹皮の形成について

質問者:   教員   ユッキー
登録番号2528   登録日:2011-10-05
樹皮は、内樹皮(篩部)と外樹皮(篩部の死滅した細胞とコルク形成層から発生したもの)が組み合わさったものと認識しています。樹種ごと違うと思いますが、内樹皮(篩部)の寿命と、篩部の一部から成り立つコルク形成層の寿命を教えて下さい。
ユッキー さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
樹皮という語は植物学用語ではないのですが、一般に形成層の外側にある二次篩部組織とそれから派生した組織を主とした部分を意味しています。ご指摘のように、通導組織として機能している二次篩部を主体とする部分を内樹皮、その外側にあり通導組織として機能しなくなった篩部、さらにその外側に形成されるコルク組織をまとめて外樹皮と呼んでいます。しかし、樹木が生きている限り内樹皮、コルク形成層は常に存在していますので、「内樹皮の寿命、コルク形成層の寿命」の意味が曖昧です。おそらく、ある時期に形成層から新生された篩部と崩壊した表皮の下に新生されたコルク形成層がどのくらいの期間生きていているのか、というのがご質問の主旨と思います。
樹皮の形成、発達に関する研究は少なくご質問に的確にお答えできないかもしれませんが、トドマツの樹皮形成を詳細に調べた研究報告に基づいてお答えします。

この論文では、トドマツの樹皮を定期的に採取して組織の変化を顕微鏡観察によって、形成層から新たにできた二次篩部の経時的形態変化を詳細に記録しています。形成層からは篩細胞が数層形成されると一層の柔細胞が形成されるという過程を繰り返しているようです。この繰り返しが数層になると一番外側の柔細胞が活性化、不規則な形状となり、その一部は厚膜細胞に転化します。形成層で篩細胞や柔細胞が新生されれば、外側にある古い篩部、柔細胞は押し出されて不規則な配列、柔細胞のさらなる分裂、厚膜細胞の形成を経て、最外層の外樹皮へと移っていくことになります。これらの観察から著者は、形成層から篩部細胞とともにつくられた柔細胞の活発な分裂活動で複雑な構造の内部樹皮が形成される。ついには新たに形成されたコルク形成層によって外樹皮へと転換していくとし、その間の寿命はトドマツの場合数年程度としています。

島地 謙:トドマツの内樹皮組織の構造と発達、日本林學會誌 46(6), 199-204, 1964
http://ci.nii.ac.jp/naid/110002840066

コルク形成層についての記載はありませんが、コルク形成層は通常一層の細胞層で外側にコルク細胞を、内側にはコルク皮層を形成します。コルク形成層は、茎肥大成長にともなって崩壊すると新たに二次コルク形成層が発達し、コルク細胞、コルク皮層の形成を繰り返します。しかし、最初に形成されたコルク形成層(一次コルク形成層)が何回ほどコルク細胞やコルク皮層を作り続けて崩壊し二次コルク形成層となるかについてははっきりしたお答えはできかねます。コルク層の厚さは種によって大きく異なりますので、寿命も種によってたいへん大きく異なっていると思われます。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2012-07-19
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