一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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低温処理

質問者:   高校生   Y
登録番号2542   登録日:2011-10-30
ダイコンの種子を低温処理し、
播種して開花まで観察し、
花芽分化が低温によって促される事を知る

教科書(農文協)に載っていて、気になりました

低温処理した種子としない種子を生育比較したら、どのような結果になるのかが載っていない為、教えて頂きたいです

考察としては、低温処理した方が生育が良くなるか悪くなるかのどちらかにしかならないと思うのですが・・

回答よろしくお願いします
質問コーナーへようこそ。歓迎致します。農文協の教科書を使っていて,このような質問をされるということは、農業高校の学生さんでしょうか。もしそうなら、植物の種子や樹芽の休眠打破、花芽形成を促進させる春化処理(バーナリゼーション)について勉強された事があるかもしれませんね。今回の質問はこれらと関連する事なので、もし学んでいないのなら、本質問コーナーで登録番号914, 1440(種子発芽);登録番号988, 1022(春化処理);登録番号0170(低温要求生一般)を検索して勉強して下さい。花芽を作るためには成長のある時期に一定期間低温に曝される事が必要な植物があります。低温要求の時期は発芽の段階から、葉ができて植物体の成長が始まっている時期まで、植物の種類によって違います、また、低温に曝される期間も異なります。有効な温度範囲は-15℃〜15℃の間ですが,最適低温は3〜8℃位です。今回はダイコンの種子に限って説明いたします。ダイコンはホウレンソウなどと同じく、種子の段階で(ただし乾燥した種子ではなく、湿潤に置かれた種子です。)低温に敏感です。一般に冬発芽して春に成長を開始して花芽を付ける冬型一年草にはこのタイプが多いのです。ダイコンの低温感受性について調べた半世紀以上前の論文がありますが、それによると、種子を吸水させてからどの時期で低温処理を開始したらもっとも効果があるかをを調べてみると、吸水後1〜3日目だという事です。効果的だということは、早く抽台が起きるということです。ダイコンやニンジンやホウレンソウなどの多くの冬型一年草はロゼット葉で成長(栄養成長)します(登録番号0226を読んで下さい)。そしてある時期に茎が伸びて花芽をつけます(生殖成長)。この茎が伸びる事を「とう立ち:抽台(ちゅうだい」といいます。だから、低温処理は生殖成長への切り替えを早めるということです。そこで質問についてですが、低温処理したダイコンの種子は早く抽台が起きる。つまり,早く花が咲くという事が推定されます。ただし、温度、処理時期、処理期間、ダイコンの品種などによってかなりの違いはあるでしょう。春化処理(バーナリゼーション)という事項を参考書や生物学事典等で調べて勉強して下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2012-08-25
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