一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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酵素はどこでつくられますか

質問者:   一般   高橋
登録番号2553   登録日:2011-11-06
はじめまして。ぶどう栽培をしており、光合成や窒素同化について勉強しなおしています。その経路の中でルビスコや硝酸還元酵素など、様々な酵素の働きで経路が進んでいくのがわかりましたが、その酵素は植物体内のどこで生産されているかいろいろ探したのですが見つかりません。
酵素は植物体内のどこで、どのような仕組みで生産されるのか教えていただきたいと思います。また、条件によって酵素生産の量が変わるものなのか、変わるとすればその要因にはどのようなものがあるのでしょうか。さらに、酵素の量と代謝の量が比例するかについても教えていただければと思います。
基本的なことかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
高橋 様

ご質問をありがとうございます。
まずは、DNAに宿る遺伝情報がメッセンジャーRNAに転写され、RNAの情報がタンパク質(アミノ酸の配列)に翻訳される過程を頭に描いてください。

細胞に中でDNAがあるのは核・葉緑体・ミトコンドリアで、それぞれの場所(細胞内区画)で上の過程が進行します。ところで、酵素はタンパク質(RNAの場合もある)ですので、その作られる場所は、細胞質・葉緑体のストロマ・ミトコンドリアの基質と言うことになります。具体的には、それぞれの場所のリボソームと呼ばれタンパク質とRNAよりなる巨大な複合体(翻訳装置)で作られます。

ただし、一般には、このようにして出来上がったタンパク質が酵素として完成しているとは限りません。ある場合には、他の分子を結合することが必要であり、また、タンパク質の部分だけについても一部分が切断除去されるとか、リン酸その他の化合物を結合するとか、個別のアミノ酸を修飾するとか、全体の形を整えるとか、いろいろなやり方で変化を受けた後に初めて有効に機能する酵素になります。加えて、必要な場所への輸送も必要です(分かりやすい例をあげれば、葉緑体やミトコンドリアで働く酵素の多くは細胞質から輸送されて来ます)。

以上のように、タンパク質が機能状態に至る過程は多段階で複雑ですので、多数の調節部位があり得ます。大まかに言えば、それぞれの段階は細胞の必要(内外の要因)に応じて調節されていると言っても過言ではありません(外部の要因の例をあげれば、光や温度があります)。

最後の点について言えば、上に述べたような事情もあり、“酵素の量と代謝の量が比例する”とは一概には言えません。

以上、具体性は少ないですが、回答とさせていただきます。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2011-11-15
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