一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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スギの本来の自生地はどこでしょうか?

質問者:   一般   千葉県民
登録番号2558   登録日:2011-11-20
僕は、素人なのですが、趣味で地元の生き物を調べているのですが、たいていの生き物は自生種なのか、外来種なのか、逸脱とか植栽とか決まっていますよね。でも、スギは、日本を代表する植物なのに、植林しすぎたせいなのか、、どこが自生地でどこが植林した場所なのか、疑問が晴れないままで、それが知りたいです。質問は2点お願いします。

①元々、スギは日本各地に点在した分布をしていたのでしょうか?
それとも、どこかの限定された地域に分布していたのですか?

②天然林のスギと、植林されたスギの見分け方はありますか?同定できるほどの差異はありますか?
個体別に困難であれば、
森林レベルで、天然とそうではないものの見分け方はありますでしょうか?


●昔、どこかで東北地方の山に本来のスギの自生地があるらしいと耳にしたのですが。

先生方、解答、よろしくおねがいします!
千葉県民様

質問コーナーへようこそ。歓迎致します。
スギは日本固有の樹木で(学名は Crytomeria japonica D.Don)、青森県から鹿児島県まで広く分布しています。北海道には分布していません。屋久島の縄文杉のように千年を超えるいわゆる古代杉と言われる杉の古木は日本の各地に存在しています。これらの中には屋久杉や鴨川市清澄寺の千年杉のように国指定の天然記念物になっているものもあります。また、塩原八幡の逆杉ように県指定に天然記念物もあります。これらはいずれも天然杉である事は勿論です。昔は日本国内で森林の一樹木としても広汎に生育したと思われます。島根県坂井川上流、三瓶小豆原埋林にからは沢山の枯死したスギが掘り出されます。私もそれから作ったキーホルダーを所持しています。スギは昔から木材として広く使われてきました。そのために、人為的に造林されて利用されています。そのような造林作業の中で、自然に生じた変種が拾い上げられ、優れた材となる変種や生育が容易な変種が選択されてきたようです。戦後は積極的に品種改良がすすめられました。これらの品種はもちろん形態的や化学組成などで差がありますが、ただ単に栽培品種と天然種との違いということで一般的に比較はできません。天然スギの材は一般に年輪幅が狭く、いわゆる芯が詰まっているということです。最近では花粉を作らない品種の開発などが試みられています。また、天然スギとしては、生育地域によって気象条件などの環境に適応した変種もあります。一般的な例は太平洋側に生育するスギ(オモテスギ)、と日本海側に生育するスギ(ウラスギ)でしょう。ウラスギは積雪の影響で枝が垂れて地面について匍匐しますと、接地によって発根し、新しい若木が生じます。このような繁殖を「伏条更新」といいます。生態的な適応といえましょう。他方オモテスギは種子での繁殖が主です。「新版スギのすべて:全国林業改良普及協会1983」のデータによると23の地域品種と32の栽培品種が挙げられています。天然スギの変種の中にはエンコウスギ、ヨレスギ,ヤワラスギナド植物図鑑にも掲載されている種類もあります。天然スギは日本中いたるところでみられますが、森林として残されている所はあちこちにみられます。。青森県大鰐天然スギ・ヒバ林;秋田県仁鮒水沢植物群落保存林;佐渡島大佐渡小杉立・舟山天然スギ林;京都府芦生京大芦生研究林;高知県魚柳瀬スギ天然林(千本山保存林);屋久島スギ天然林などなど、他にも沢山あります。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2011-12-09
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