質問者:
高校生
ゆきな
登録番号2570
登録日:2011-12-15
こんにちは。みんなのひろば
セシウムと植物の関係について
ヒマワリは土壌中のセシウムを吸収することは少ないと聞きました。
水や養分と間違えてセシウムを取り込むということは、なぜないのですか?
チェルノブイリ原発事故の際はヒマワリなど使って土壌の汚染を除去していたと聞いたのですが、その時はセシウムを吸収できていたのでしょうか?
また、セシウムを取り込んだことで、遺伝子に突然変異が起こり、植物が肥大化するということはあるのでしょうか?
よろしくお願いします。
ゆきなさん
質問コーナーへようこそ歓迎致します。原発事故による放射性物質の土壌汚染というのは深刻な問題ですね。質問にもあるように、植物を利用して土壌や河川・湖沼などに含まれる有害な物質を除去する方法をファイトレメディエーション(登録番号2469参照)といいます。この質問は放射性Csのことなので、ここではその事をを念頭に説明します。質問の内容を大別して、(1)Csの吸収(取り込み)と(2)吸収した放射性Csによる植物体(成長など)への影響の二つに分けて考えましょう。
1)Csの吸収:植物は根から水分と一緒に土壌の水分に溶けている多くの種類の無機物質を吸収します。これらはN, P, K. Ca, S, Mg, Mn, Mo, Znなどの植物の成長に必要な元素の供給源です。一般の土壌は岩石の壊れた出来た粒子の他に、植物を含む生物の死骸が分解されたものを含みますからこれらを構成物質の元素は当然含まれる事になります。Cs は自然界ではそんなに沢山一般的な土壌に含まれる元素ではありませんが、Cs がもし存在すれば、植物はこれを吸収する事はできます。もっとも、吸収する能力は植物の種類によって異なります。植物はこれらの元素をイオンの形で取り込むみますが、取り込むときは細胞膜を通過させなければなりません。従って細胞膜の上にはこれらのイオンを細胞内へ取り込める様な装置が存在します。大きく分けて、一つはそれぞれのイオンに決まった輸送体(タンパク質)による能動的(エネルギーを消費する)の取り込み、もう一つは、イオンチャンネルという通路を通るしかたです。Kイオンチャンネルというのは良く知られた装置です。Cs がどういう経路で細胞内へ入るかはまだはっきりしない所が多いのですが、Cs は化学的にKと似ているので、このような取り込み装置を使って細胞内(植物体内)へ吸収されると考えられています。ちなみに、Csイオンは放射性のCs134、Cs 137でも普通のCsとの間に取り込みに関しては差はありません。Cs は植物にとって害がありますので、非放射性でも多量に吸収すると植物の成長は阻害されます。その阻害作用は遺伝子の発現に影響するのではなくて、Kの取り込みとの競争的阻害であることがシロイヌナズナ(アラビドプシス)を使って実験で報告されています。また、Csの吸収は他のイオンの存在によっても影響を受ける様です。例えば、ある実験では12mM(ミリモーラー)のNH3イオンと10mMのKイオンが共存する時がCsの体内蓄積が一番高いという報告もあります。したがって、植物がCsを吸収し易いかどうかは単純な条件では決まらないかもしれません。
2)放射性Csの植物への影響:放射性物質が出す放射線は、強いと細胞の機能に損傷を与えますが、これは、高い放射能を持つ物質が多量に直接植物体にふりかかる様な事があると起きるでしょう、。放射性物質が植物体内に蓄積されると、長い間には遺伝子に変異を起こさせ、それが形態的な異常となって現れる事はあるでしょう。根から吸収される放射性Csはヒマワリでは主に茎の節、葉脈、若葉に蓄積される様です。植物体の大部分は既に出来上がった細胞から構成されており、通常植物体が死ぬまで変化はありません。しかし、若い組織では盛んに細胞が増えているので、そういうところでは、放射線により遺伝子に変異が起きた事が新しい細胞に現れ、形態異常が起きる事は考えられます。特に茎の先端(茎頂)には分裂組織があって、ここでは細胞分裂が継続して起こり、細胞は茎や葉の細胞に分化していきます。いわば、胚の様な状態にあるのです。もしここに多量の放射性Csが常に蓄積するとなると、遺伝子が影響を受けて、変異のある分化がおきる事はあるでしょう。放射線は突然変異を起こさせますので、これを人為的に照射して植物の変わり種を作出する事ができます。この場合放射線の中でガンマ線をだす放射性物質が線源として使われます。普通は種子の段階で照射を行い、発芽して出て来た様々な変異の中から有用な変異をを選びます。種子は植物が胚の状態にありますから、茎頂の場合と同じように放射線の影響を受けて変異を生じ易いのです。Csはガンマ線を出しますので、Cs137を照射して菊の花色の変異を起こさせた例があります。放射性Cす取り込んだ事で、必ずとは限りませんが、植物体内で新しく分裂して出来る細胞の遺伝子に変異があり、その影響で組織が肥大化したり,脱分化(登録番号2435他を参照)のようになったりする場合はあると思います。
登録番号2454も参照して下さい。
質問コーナーへようこそ歓迎致します。原発事故による放射性物質の土壌汚染というのは深刻な問題ですね。質問にもあるように、植物を利用して土壌や河川・湖沼などに含まれる有害な物質を除去する方法をファイトレメディエーション(登録番号2469参照)といいます。この質問は放射性Csのことなので、ここではその事をを念頭に説明します。質問の内容を大別して、(1)Csの吸収(取り込み)と(2)吸収した放射性Csによる植物体(成長など)への影響の二つに分けて考えましょう。
1)Csの吸収:植物は根から水分と一緒に土壌の水分に溶けている多くの種類の無機物質を吸収します。これらはN, P, K. Ca, S, Mg, Mn, Mo, Znなどの植物の成長に必要な元素の供給源です。一般の土壌は岩石の壊れた出来た粒子の他に、植物を含む生物の死骸が分解されたものを含みますからこれらを構成物質の元素は当然含まれる事になります。Cs は自然界ではそんなに沢山一般的な土壌に含まれる元素ではありませんが、Cs がもし存在すれば、植物はこれを吸収する事はできます。もっとも、吸収する能力は植物の種類によって異なります。植物はこれらの元素をイオンの形で取り込むみますが、取り込むときは細胞膜を通過させなければなりません。従って細胞膜の上にはこれらのイオンを細胞内へ取り込める様な装置が存在します。大きく分けて、一つはそれぞれのイオンに決まった輸送体(タンパク質)による能動的(エネルギーを消費する)の取り込み、もう一つは、イオンチャンネルという通路を通るしかたです。Kイオンチャンネルというのは良く知られた装置です。Cs がどういう経路で細胞内へ入るかはまだはっきりしない所が多いのですが、Cs は化学的にKと似ているので、このような取り込み装置を使って細胞内(植物体内)へ吸収されると考えられています。ちなみに、Csイオンは放射性のCs134、Cs 137でも普通のCsとの間に取り込みに関しては差はありません。Cs は植物にとって害がありますので、非放射性でも多量に吸収すると植物の成長は阻害されます。その阻害作用は遺伝子の発現に影響するのではなくて、Kの取り込みとの競争的阻害であることがシロイヌナズナ(アラビドプシス)を使って実験で報告されています。また、Csの吸収は他のイオンの存在によっても影響を受ける様です。例えば、ある実験では12mM(ミリモーラー)のNH3イオンと10mMのKイオンが共存する時がCsの体内蓄積が一番高いという報告もあります。したがって、植物がCsを吸収し易いかどうかは単純な条件では決まらないかもしれません。
2)放射性Csの植物への影響:放射性物質が出す放射線は、強いと細胞の機能に損傷を与えますが、これは、高い放射能を持つ物質が多量に直接植物体にふりかかる様な事があると起きるでしょう、。放射性物質が植物体内に蓄積されると、長い間には遺伝子に変異を起こさせ、それが形態的な異常となって現れる事はあるでしょう。根から吸収される放射性Csはヒマワリでは主に茎の節、葉脈、若葉に蓄積される様です。植物体の大部分は既に出来上がった細胞から構成されており、通常植物体が死ぬまで変化はありません。しかし、若い組織では盛んに細胞が増えているので、そういうところでは、放射線により遺伝子に変異が起きた事が新しい細胞に現れ、形態異常が起きる事は考えられます。特に茎の先端(茎頂)には分裂組織があって、ここでは細胞分裂が継続して起こり、細胞は茎や葉の細胞に分化していきます。いわば、胚の様な状態にあるのです。もしここに多量の放射性Csが常に蓄積するとなると、遺伝子が影響を受けて、変異のある分化がおきる事はあるでしょう。放射線は突然変異を起こさせますので、これを人為的に照射して植物の変わり種を作出する事ができます。この場合放射線の中でガンマ線をだす放射性物質が線源として使われます。普通は種子の段階で照射を行い、発芽して出て来た様々な変異の中から有用な変異をを選びます。種子は植物が胚の状態にありますから、茎頂の場合と同じように放射線の影響を受けて変異を生じ易いのです。Csはガンマ線を出しますので、Cs137を照射して菊の花色の変異を起こさせた例があります。放射性Cす取り込んだ事で、必ずとは限りませんが、植物体内で新しく分裂して出来る細胞の遺伝子に変異があり、その影響で組織が肥大化したり,脱分化(登録番号2435他を参照)のようになったりする場合はあると思います。
登録番号2454も参照して下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2011-12-21
勝見 允行
回答日:2011-12-21