一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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リン酸の吸収と地温とニラの灰色かび

質問者:   自営業   kazukan
登録番号2574   登録日:2011-12-25
私は、農家でニラをハウス栽培しています、冬期の現地検討会で必ずニラの灰色かびの質問が出てきます。
その原因は、冬期に地温が低下してリン酸の吸収が低下するとの事でしたが、地温低下によってリン酸の吸収が落ちるのは、本当でしょうか?
それが本当なら、地温がどれくらいに下がればリン酸の吸収が低下するのでしょうか?
確かに、夏期には灰色かび病は発生しません。
kazukan様

質問コーナーへようこそ。歓迎致します。本学会広報委員長の柿本辰男先生からのメッセージにもありますように、特定の作物など(例えばニラ)の病気や栽培技術に間する質問にはお答え出来ませんが、リン酸吸収と地温の関係については、東北農業試験センターの青木和彦先生にお話を伺いましたので、それを参考にして回答いたします。地温が低くなると根からの養分(ミネラル)の吸収はリン酸塩に限らず、硝酸塩など他の無機物質の吸収も悪くなるのが普通です。この現象はニラだけでなく、他の植物でも同じです。ただ植物の種類によって差はあるでしょう。植物は成長に必要な養分は根から水と一緒に吸収します(登録番号2570 参照)。ふつう地温が低下するという事は気温も低下している訳ですから、そのような気候条件下では葉(の気孔)からの蒸散は少なくなるか、止まってしまいます。それとともに根からの吸水も少なくなり、結果的に水と一緒に吸収されてくる養分も少なくなります。さらに、リンイオン、硝酸イオン、Kイオンなど多くのイオンは根の細胞膜に存在する特別な酵素の働きでエネルギーを消費して能動的に細胞内へ取り込まれます。この能動的な吸収は温度が低くなると低下します。これらのことから、地温が低いと、根は土壌中にあるミネラルは種類を問わず吸収能力が落ちるといえます。リンや窒素は細胞の主要高分子である核酸(遺伝子など)やタンパク質の構成元素ですから、これらが不足する事は核酸やタンパク質の合成が低下して、病気にかかり易い原因となるのかも知れません。なお、どのくらい地温が低下すると影響がでるかということは、植物の種類によってもことなるで、一般論としてはいえません。ニラの場合はニラを使った実験をしてみなければわかりません。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2011-12-27
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