一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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植物の髄の役割について

質問者:   自営業   たま
登録番号2578   登録日:2012-01-04
トマト農家です。トマトの茎の太さが太いほうが良いのか・細いほうが良いのか考えていた時、茎の太さは髄の大きさによって決まるのではないかと考え、髄の役割について気になったので過去の質問を調べると

登録番号1990の回答で「随の主な機能は養分を貯蔵する事とそれを他の組織へ輸送する事にある」とありますが髄に貯蔵される養分とはどのような物質でどういう経路で輸送するのでしょうか?

また、登録番号2282で中空茎について書かれていますが、以前古くなった余り苗を子葉の上で切断すると髄の部分がスカスカになっていたことがあります。これも中空茎のようなものかなと思うのですが、髄は植物にとってなくてはならないものなのでしょうか?
たま 様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
随は植物の茎・葉柄・根などの器官にみられます。草本植物だけでなく木本植物にもあります。ただし後者では、茎(幹)が成長するにしたがって、茎の中心部を占めていた柔細胞の随組織は発達した木部で占められるようになり、固い組織となります。草本植物の茎では一般に随は水分を多く含んだ組織として残りますが、やはり成長がすすむと、質問のように空洞化がおきます。随の役割は養分と水分の貯蔵と考えられています。養分としては光合成産物の糖類(デンプンも含む)が主なものですが、無機の塩類や有機酸等も含まれます。植物によっては随でも光合成が行われますので、そこでつくられる物質はもちろんのこと、葉から転流されて貯蔵される糖類もあります。サトウキビでは随細胞に多量のショ糖が蓄積される事は御存知だと思います。ふつう貯蔵物質は植物の成長に伴い、成長している他の組織に供給されますが、その通路は転流に使われる篩管(篩部にある)です。草本植物は木本のように固い組織を作りませんので、体の支持は植物体を構成している細胞内の液胞にある水分が重要な役割を果たしています(登録番号0156, 0246 参照)。つまり、十分な水を吸って細胞が張りつめている事が必要なのです。随の細胞が十分な水を蓄えている事は体の支持にも役立っています。しかし、トマトやナスや他の多くの草本植物では成長の進んだ段階では随が退化してく茎は空洞化する事があります。そのような場合は茎の表皮組織等のリグニン化等によっていわば外骨格の様な支持構造が出来上がっているので、水分不足の状態になっても茎は萎れる事はありません。ただし、葉や若い組織では萎れが見られるはずです。空洞化がなぜ起きるかという事はいろいろと研究されてきていますが、恐らく細胞の自己分解(オートリシスといいます)によって随の細胞が可溶性/易動性の低分子に分解されて、他の成長組織に必要な養分として転流されるからだと考えられています。植物が若いときは茎の随が必要ですが、加齢した植物組織では段々随の役割は薄れていくのだろうと思われます。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2012-01-20
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