一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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肥料だけで植物は生長するのか

質問者:   教員   うめ
登録番号2583   登録日:2012-01-11
小学校5年の植物の生長の学習の時のことです。生長に必要なもので、「日光」と「肥料」という予想が出てました。子どもは日光(光)は絶対に必要だという根拠を今まで植物を育てた経験から考えましたが、「もやしは日を当てないで育つよ」という話が出ました。しかしそれは、種子の中にあったデンプンが使われ、発芽した状態だという話になりました。だから、もやしはあれ以上の大きさにはならない。もしもっと大きくしたいのなら、日光に当てる必要があり、そうすると白色にならないからもやしじゃなくなるということになりました。そして、やはり日光が必要ではないかという予想にまとまりました。
しかし、「日光の代わりに、肥料を与えれば植物は生長するのではないか」という考えも出されました。学習内容としては、A(肥料だけ) B(日光と肥料) C(日光だけ)の3つの植物の生長の様子を比べ、植物の生長(実がなって種ができるところまで)には、日光と肥料がかかわっていることがわかればよいのですが、子どもの中には、「日光に当てなくても、日光に当たってできる分の肥料を与えれば植物は生長し、種をとることができる」と考えている子もいます。いろいろ調べたのですが、はっきりとはわかりません。植物は必ず日光がなければ生長しないのか教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
うめ様
 みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。光がないところでも植物はちゃんと育つかと云うご質問ですが,光がない所でもちゃんと育つに違いない植物があります。ギンリョウソウのような腐生植物と呼ばれている植物です。ギンリョウソウは葉緑素を持たない真っ白な植物で、勿論、光合成は出来ません。腐った枯れ葉に含まれている栄養分を利用して生きているのですが、ちゃんと花を咲かせ種をつけています。また、根は葉緑素を持っていないので、光合成は出来ませんが、そんな根の先端を切り出し、無機栄養やショ糖、ビタミンなどを含む培地で培養すると、いつまでも生長し続けます。このことも、植物が生きて行くだけならば光合成はしなくても構わないことを示しています。ですから、生徒さんの「日光に当てなくても、日光に当たってできる分の肥料を与えれば植物は生長し種をとることが出来る」との考えは正しいのではないかと思いますが、実際に光のない所で植物を育てて種を作らせることに成功したと云う話は聞いたことがありません。どういう肥料(ビタミンなど)を、どんな濃度で、どういうタイミングで与えるのかなど、はっきりさせなければならない問題が沢山残っているからだと思います。もう一点、このコーナーの登録番号 1642 にもありますように、光は光合成に必要であるだけでなく、植物の生長の制御にも関わっています。もやしを育ててお気づきと思いますが、光は茎の伸びを抑え、茎を太くします。光がないと茎は細いままで長くなり、立っていられず倒れてしまいます。倒れたことによる害作用は無視できません。また、多くの野生の植物では、光のない場所では発芽することが出来ません。つまり、光のない所では生活を始めることさえ出来ないのです。また昼間が長くて、夜が短い条件下でないと花を咲かせることが出来ない植物もあります。長日植物と呼ばれている植物です。長日植物は夜ばかりで昼間のない所では花を咲かせることができないので、種を作らせることも出来ません。結論から言いますと、「日光に当てなくても、日光に当たってできる分の肥料を与えれば植物は生長し種をとることが出来る」は、ある植物には当てはまりますが、どんな植物にでも当てはまるわけではないと云うことになります。余計なことですが、植物の生活に光と肥料が大切と云うことをお教えになられておられるそうですが、水が大切であることも忘れずに教えてあげて下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2012-01-20