一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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昼間呼吸することを証明する実験は?

質問者:   会社員   ぱんや
登録番号2604   登録日:2012-02-27
教科書では,昼間に光合成と呼吸を夜に呼吸を行うとあるのですが,実験では明るいところ光合成を行うということ,暗いところで呼吸するということだけです。昼間呼吸していることを分かるためにはどのような実験をすればよいのでしょうか。
ぱんや さん

ご質問をありがとうございます。
原理的に簡単なのは、酸素の同位元素(O16とO18)を利用して、光合成の過程で発生する酸素(水に由来)と呼吸の過程で外気から吸収される酸素を区別して測定することです。ただし、測定には質量分析器を使うことになりますので、簡単な実験と言うわけではありません。
歴史的上、光照射下での呼吸の速度を見積もることは光合成研究者にとって大きな課題でした。この問題を追求する過程で、「光呼吸」と呼ばれる現象が発見されました。酸素と二酸化炭素の消長に関係する生理過程についてまとめると、(A)光に依存して進行し、酸素を発生して二酸化炭素を吸収する過程である「光合成」、(B)暗黒化でも進行し、二酸化炭素を発生して酸素を吸収する過程である「呼吸」、(C)光に依存し、酸素を吸収して二酸化炭素を発生する過程である「光呼吸」があることになります。
ご質問では(B)の過程が光照射下でも進行していることを証明する実験方法が尋ねられていますが、(B)と(C)の過程を区別して測定することには困難があります。上に述べた方法以外に、呼吸基質の消費を生化学的に追跡する方法もありますが、解析は複雑になります。
以上、回答とさせていただきます。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2012-03-07