一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物が生育するのに必要な光量

質問者:   会社員   けろぴ〜
登録番号2610   登録日:2012-03-05
雑草防止機能が付与されたマルチフィルム等が販売されておりますが、雑草防止用途として色が黒、グリーンがありました。黒ならば光合成を防止するので、雑草防止としては理解できるのですが、グリーンは光を通すので、防止にはならないと思うのですが効果はあるのでしょうか?

メーカーに光量について問い合わせた結果(全光線透過率)
黒:0.1%未満
グリーン:60%前後
透明:90%以上
でした。

天候・環境により異なるとは思いますが、光量を依存の環境下より40%以下にすれば植物は正常に育たなくなるのでしょうか?また、植物はどの位の光量があれば光合成ができるのでしょうか?グリーンでも光量が低下して光合成ができない位の光量になっていると理解して良いのでしょうか?

知見がございましたら、お教えください。
けろぴ〜 さん

ご質問をありがとうございました。
作物を育て、雑草の生育を抑制する光条件を求められているのですか。それとも、作物の部分は膜の外に出し、周りをフィルムで囲って雑草の生育を抑えることを考えておられるのでしょうか。私が最初に見つけた「農業用マルチフィルム」は、作物の真上にあたる部分が透明で、それ以外の部分は遮光または赤外光透過の特性をもつように作られたフィルムでした。これだと、中心にある作物は育ち、周辺の領域の雑草は育ちにくく、また、地温が保たれることになるので、フィルムがマルチな効果をもたらすことを容易に理解できます。

ところで、全面が黒で、しかも全光線透過率0.1%未満となると、普通の作物や雑草は光量不足で育ちにくいのではないでしょうか(黄ニラの栽培に使われるようなものですね)(後述の“光補償点”参照)。グリーンで全光線透過率60%前後のフィルムの場合、赤や青の波長領域の光を透過しないことになるので、透過のスペクトル特性にもよりますが、光合成に有効な光の透過率は60%を更に大きく下回ることになっていると思います。したがって、この条件では作物と雑草の生育はある程度抑制されるかも知れません。この条件では、植物の生育に関連する青色光、赤色光、遠赤色光などの効果の問題も重なってくると思います。

植物の生育は、原理的には、光合成による生産と呼吸による消費の差として生ずることになります。したがって、この値がゼロになる光補償点(植物の種類や条件によりますが、1,000から2,000ルックス程度)より強い光の下では植物の生長は光依存的に進行します。ご質問にある“依存の環境下”との表現は分かりにくいですが、通常の野外の光条件(例えば、晴天時の昼間の光強度で50,000から100,000ルックス)、あるいは光飽和点強度(これも植物と実験条件によりますが、20,000から100,000ルックス)の、40%以下程度の光強度下で植物が育たなくなることはないと思います。

なお、蛇足かも知れませんが、陸上の植物に限って言えば作物と雑草は同じ光合成色素を使っておりますので、光条件を変えることで選択的に雑草の生育を抑制するには特別な工夫が必要になると思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2012-03-13
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