一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ニワウルシの樹肌について

質問者:   公務員   fhan0112
登録番号2612   登録日:2012-03-09
このコーナーに数回質問させていただきましたが、いつも、丁寧な回答をいただきありがとうございます。
今回は、ニワウルシ(シンジュ)の樹肌について質問させていただきます。
幹径が60〜70㎝以上ある大木のニワウルシの樹肌にメッシュ状の模様ができるものがあります。
もう少し詳しく説明しますと、メッシュ状の模様の一つはひし型をしており、その一つ一つがこんもりと膨らんでいて、くぼんだ所が線状(メッシュ状)に見えるのです。その模様のできる位置は地際近くから高さ2〜3mのところです。
このような模様を持った樹肌のニワウルシを頻繁に見かけるわけではありませんが、そのような模様をもっている樹木は必ずニワウルシなのです。
この現象は、樹皮下(師部や木部)でどのような作用が働いているのでしょうか。養分を貯蔵するために、膨らみを造っているのでしょうか?何のためにあのような膨らみ、メッシュ状の模様ができるのでしょうか?
ご教授願います。
fhan0112様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。樹木の幹は様々な樹肌を持っていますが、その模様は種によってかなり特異的なので、樹肌の模様により樹種を特定することができます。また、樹肌は樹の年齢にもよって異なります。若い樹は一般に模様はなく滑らかです。ご質問はニワウルシの樹肌に関することですが、内容は「種によってなぜ模様が違うのか」という一般的な問いとしてお答えいたします。
すでにご存知かもしれませんが、まず、樹皮(専門植物学用語ではありません)の形態と形成について簡単に説明いたします。幹(茎)は初めは表皮と皮層で覆われていますが、成長ともに新たに加えられる二次形成層の活動で内側に木部,外側に二次師部ができます。そして二次師部の中間にコルク形成層ができます。そして、内側にコルク皮層、外側にコルク組織が形成されます。コルク形成層を挟んでこれらの薄い部分を周皮と呼びます。樹は成長するに従って、木部と師部がします。量的にみると師部の増加は大きくはありません。しかし、木部と師部の増加(肥大)が進むと葉締めにあった表皮と皮層は裂けて幹からはがれてしまいます。コルク組織の外側にある組織は内部の細胞や導管組織からも遮断されますので死にますが、細胞壁の肥厚等により着色したり硬いものになります。この外側の部分は外樹皮と呼ばれています(内樹皮は二次形成層の部分にあたります)。一度形成されたコルク層は継続して活動することはなく、樹の成長が更に進むと二次師部にまた新たなコルク層が形成されます。こうして同じことが繰り返されていくのです。その結果、幹の肥大は外樹皮に機械的な圧力を加えることになり、外樹皮には裂け目が出来たりして、やがて幹からはがれて行くことになります。したがって、樹皮の模様は物理的出来る物と行ってよいでしょう。コルク形成層の配列や、内側と外側への細胞分裂に仕方(木部と師部の形成の仕方)細胞の形は木の種類(種)によってまちまちですので、これが樹皮に様々な模様をもたらすことになります。さらに,コルク層には葉の気孔のように気体の出入り口となるヒ皮目という構造ができ、横柄,縦柄、ダイヤ柄などさまざまな模様を加えます。ある研究によると、木部と師部の成長比が樹皮のパターンを決める1つの大きな要因であると結論しています。なお、登録番号1854, 2394, 2528の回答も読んで下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2012-03-21