一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ダイコンの系統について

質問者:   教員   ひろ
登録番号2613   登録日:2012-03-09
いろいろと調べてもよくわからないので、教えて下さい。ダイコンは、アブラナ科に所属しているようですが、アブラナ科の中での系統関係はどうなっているのでしょうか。また、いろいろなダイコンの品種間の系統関係は、どのようになっているか教えてください。
ひろ さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問は東北大学の渡辺正夫先生に伺い、次のご回答をいただきました。ご存じと思いますが渡辺先生はアブラナ科をご専門に活発な研究を続けられておられます。

これとは別に、Raphanus, Phyllogeny をキーワードとして文献調査をしましたら、DNA配列からBrassica属、Raphanus属の関係を調査された論文(英文)が見つかりました。Open Accessの論文ですので、以下のURLをお知らせします。
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbbs/58/1/15/_pdf
DNA配列から推定した両属に系統関係が示されていますのでご参考になると思います。ただし、これは種レベルまでの系統であって、変種、品種については触れられていません。



【渡辺先生のお答え】
植物生理学会の質問コーナーにありがとうございました。
アブラナ科全体の分類を渡辺自身があまり心得ていないのですが、アブラナ属、いわゆる、キャベツ、ハクサイ、等が含まれる、Brassica属です。これとダイコンを含む、Raphanus属とは、比較的近いといわれています。その中でも、Brassica nigraという、和名で、クロガラシといいますが、これと比較的近いと。この種は、日本では栽培されていません。根っこが黒いということくらいしか、渡辺も見たことはありません。同じBrassica属の、B. oleraceaは、キャベツ、ブロッコリー、芽キャベツなどが含まれ、B. rapa (前は、B. campestrisといわれていました)は、ハクサイ、カブ、ミズナ。これらとは、少し遠い関係といわれています。
アブラナ科野菜を考えたときに、これらとの類縁関係くらいわかれば、あとは、食べるものとしては、カラシナくらいでしょうか。カラシナは、B. nigraとB. rapaの両方のゲノムを持った、複二倍体 といいます。その意味では、近いともいえます。これらは、部分的な核、細胞質の遺伝子解析等から、分類されたものです。

では、ダイコンの品種間の系統関係ですが、渡辺の学部時代のノートくらいしか、手元に資料がありません。ダイコンとしては、世界のものを分類すると、

1) 20日ダイコン:中央アジア原産、早生、小型、生食用
2) 北支コダイコン:北シナ、20日ダイコンの春巻きタイプ、低温でも抽だいしにくい
3) 西洋コダイコン:地中海沿岸
4) 黒ダイコン:早生、辛み、黒色
5) 北支ダイコン:アントシアンを表面などに含む、デンプンも多い。中生、中国野菜。
6) 南支ダイコン:南シナから日本へ、中生から晩生、抽だいしやすい、デンプン少ない。

日本で栽培が普及したのは、南支ダイコン、20日ダイコン、北支ダイコンあとは、桜島、守口のような地ダイコン。
ノートには記載がないのですが、今のダイコンは、ほとんど、南支ダイコンの子供だと思います。種やさんで種を見ると、周り、中央が赤いのがありますが、あれが、北支ダイコン、中国野菜のたぐいになるかと思います。
渡辺のノートの記載では、
作型で分類されていて、
夏播き(秋ダイコン)のが、関東では、練馬ダイコン、関西は、宮重ダイコン
宮重というのは、名古屋近辺の地名だそうです。
晩夏播き(冬ダイコン)が三浦ダイコン、聖護院ダイコン、他には、桜島とか。
秋まき(春ダイコン)では、
覆下というのがあるそうです。東京の亀戸が起源のようです。
細くて20cmくらいだそうです。
他には、時無とか、二年子というのがあったそうですが、いまでは、ほとんど栽培されてないようです。
類縁関係というほどでもないですが、古い本を見つけたので、ご紹介します(古い本なので、書店に無く図書館にあるかもしれません)。
書籍名:野菜種類・品種名考
著者: 農業技術協会
発行: 1986年
ISBN: 4889790233, 9784889790238

渡辺 正夫(東北大学大学院生命科学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2012-03-14