一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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オジギソウのお辞儀をしないメカニズム

質問者:   会社員   花の精
登録番号2617   登録日:2012-03-18
オジギソウは二酸化炭素濃度が高い環境に置くとお辞儀をしなくなるという実験をネットでみました。

 質問

 ①上記のお辞儀をしなくなるというメカニズムは?
 ②エチルエーテルの場合のメカニズムは?
 ③上記①および②に関する参考文献は?
花の精 さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
お返事が遅れて申し訳ありません。たいへん難しいご質問です。
オジギソウの運動には、活動電位の変化、生体膜を通るイオン移動、それらに基づく水の移動(アクアポリンという水チャンネルの制御)が葉枕細胞で急速におこります。葉枕の上側と下側でのイオン、水の移動は反対の動きをし、しかも上下同調しておこる特徴があります。そこで、イオン輸送、活動電位、細胞内運動(原形質流動など)を専門に研究されている神戸大学 三村徹郎先生、大阪大学 高木慎吾先生に伺った結果をまとめました。
人に使用する麻酔剤でオジギソウを処理すると機械刺激でもお辞儀をしなくなることは実験的に示されています(例えば、麻酔 42巻8号 1190-1193, 1993)。しかし、そのメカニズムは分かっておりません。高濃度の二酸化炭素でもオジキソウの運動を阻害することを実験的に示した文献は見つけられませんでしたが、動物には麻酔効果があることは実証されていますのでおそらく麻酔剤と類似の効果があるのかもしれません。
麻酔剤は生体膜に溶け込んで脂質の流動性や脂質-タンパク質相互作用に影響が出るため、イオンチャンネルのような膜タンパク質に影響がでる、膜電位を維持しているH+-ATPaseの働きが鈍って膜機能を維持できなくなる、エーテル処理をしたときは、膜の興奮性が失われるので、それより前の段階に影響を持つ、などのことが考えられます。しかし残念ながら現段階ではご質問にお答えできるだけの実験的知見がほとんどなく類推に過ぎません。
お辞儀するメカニズムについてすら、未だに定説は定まっていません。以下の文献はご参考までに
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3115350/
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2633741/
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1365-3040.2009.02066.x/abstract?userIsAuthenticated=false&deniedAccessCustomisedMessage
JSPPサイエンスアドバイザー
三村 徹郎(神戸大学)、高木 慎吾(大阪大学)、今関 英雅
回答日:2012-04-17