一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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トマトの糖度をあげたい

質問者:   小学生   うーたん
登録番号2621   登録日:2012-04-03
こんにちは。
私は去年の自由研究で、トマトの育て方を変えて、糖度に差が出るか調べてみました。水耕栽培、わき目や実を摘まずに育てたもの、わき目を摘んで実の個数も5個にそろえて育てたものでは、糖度に大きな差はありませんでした。
今年も育て方を変えて、挑戦しようと思っています。
ニュースで、土に中の塩分が高い地域で作っているトマトは、糖度が高くて美味しい・・・と言っていました。
私も、トマトに塩分を与えて育ててみようと考えました。でも、塩分は植物を枯らせてしまうので、何故枯れずに育つのか不思議に思いました。
植物に塩分を与えて育てるのに、気をつけなければいけないことは、どのようなことですか?
うーたん さん

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。いろいろと考えて試しているのですね。物事を探求する心を持つのはとても良いことです。さて、トマトの糖度はどのようにして決まるのかを考えてみましょう。市場ではフルーツトマトなどという名前で、いわゆる甘いトマトが出回っていますね。トマトでなくても果物、例えばイチゴ、モモ、ブドウなどマーケットに並んでいる果物を見ると、糖度XXと数値が示されていますね。この値はいくつであれば甘いといえるのでしょうか。果物は一般に糖度10ぐらいだと、「あまーい!」と書かれています。トマトではどうでしょうか。はっきりとした基準ではないようですが、甘いトマトは大体糖度8以上のようです。でも中には特別の栽培法で糖度10.8という高糖度トマトを作った研究所もあります。糖度とは果実に含まれる糖分の濃度のことで、糖度計という測定器で計ります。今ここに二つの果実があって、1つは含まれる糖分が5g, もう1つは6gだとします。どちらが甘いと思いますか。これだけでは分かりません。最初のトマトは果実の重さが100g, あとの方は150gだとします。そうすると、果実1gあたりの糖分は初めのトマトの方が多いことになります。これはつまり、最初のトマトの方が甘いということです。一般にマーケットで売られている甘いトマトの特徴は小型のものが多い、固め(みずみずしくない)であることに気づいていますか。トマトの果実は水分を沢山取り入れて、大きくなっていきます。トマトの糖分は、葉で行われる「光合成」(学校で習いましたか?)という太陽の光を使って、根から吸い上げた水と葉から取り入れた空気中の二酸化炭素とから作られて、茎の中を通って供給されます。もし、トマトに沢山に水分があると糖の濃度は薄くなりますね。しかし、水分が少ないと、濃度は濃くなります。だから、甘いトマトは一般に小型で、硬い(水っぽくない)のです。さあ、これで想像出来るでしょう。甘いトマトをつくるには、できるだけ水分の供給を少なくしてやることです。土中の塩分を高めるのは根からの水の吸収を抑えるためです。とはいっても、植物体が育つには十分水が無ければいけません。だから水を制限するのはとても難しいことなのです。トマトの栽培業者は良く管理されたやりかたで、与える塩類の濃度,時期、期間などを決めている様ですので、簡単に土壌にどれくらい塩を与えれば良いかということではありません。そこで、うーたんさんが家で試してみるとよいと思われる方法を書いてみます。トマトは普通に育てて、実がなり、ある程度大きくなって、熟す頃になると、出来るだけ水を与えないようにしてやります。勿論全くやらないと、しおれてしまいますから、注意が必要です。日中葉が一寸しおれたかなという程度にしておくと、糖度の増したトマトが得られるはずです。戸外で栽培するときは、良く陽が照っていることも大切です。梅雨に入る前に、与える水の量を制限しながら、トマトが赤く熟し始めるようにするとよいでしょう。がんばって試してみて下さい。なお、登録番号1232も見て下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2012-04-15
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