一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ツタンカーメンのエンドウ 莢の色素

質問者:   一般   佐倉 想
登録番号2629   登録日:2012-04-21
ツタンカーメンのエンドウを育てていて,若い莢を煮沸したところ,青色の液を得ました.これに食酢を加えたところ赤色に,重曹を加えたところ緑色に変色しました.
この色素の本体は何なのでしょうか.
アントシアニンでよろしいのでしょうか.
佐倉 想 様

ご質問をありがとうございます。
この質問にはアントシアニンについて詳しい名古屋大学の吉田久美先生が下記の回答文をご用意下さいました。ご参考になさって下さい。



(吉田久美先生からの回答)
佐倉さん
私自身は、育てたことはありませんが、莢が濃い紫色であることは聞いております。実際にはきちんと化学分析しないと分かりませんが、この色は多分、アントシアニンによるものと推測されます。

莢などのアントシアニンは、比較的単純な構造で不安定な色素が多く、煮沸すると分解して無色になる場合が多いのですが、ひょっとして、アシル化アントシアニンかなにかで、安定かもしれません。熱水での抽出液が青色というのは、面白い現象ですが、かなり、水に対して莢が多かったのでしょうか。色の濃ささはどのくらいでしたでしょうか。鍋からの金属イオンによって、あるいは、塩ゆでの際のにがり成分(塩化マグネシウム)によって錯体ができて青くなったかもしれませんが。

酸性で赤、塩基性で青というのがアントシアニンの通常ですが、多分、緑色になったのは、フラビリウム環が開環して、カルコンになった成分が共存したためではと推測します。カルコンは塩基性で黄色になります。これに若干残存したアントシアニンの青色とが混ざった色で緑色になったかと。実際に、紫キャベツも重曹が多いと緑になりますし、これを使った色変わりのお好み焼きの実験もあるそうです。

エンドウの莢の色素ですが、より確かにするためには、可能でしたら、若い莢を一旦冷凍庫に入れて凍結し、凍った莢に塩酸があれば、0.3%くらいの塩酸水溶液、なければ食酢でもいいかもしれませんが、これを加えて抽出し、これを重曹か、水酸化ナトリウムで中性、アルカリ性へともっていくと順々に色の変化が見られるかもしれません(水酸化ナトリウムでpHを合わせるのは難しいので、緩衝液があればベストですが)。

可能なら、一度入手して分析し、また結果をお知らせできればと思います。

吉田 久美(名古屋大学大学院情報科学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2012-04-23
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