一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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イースターエッグ, セイヨウオキナグサ

質問者:   一般   佐倉 想
登録番号2631   登録日:2012-04-24
質問コーナー 登録番号2629 への丁寧なご回答,ありがとうございました.知人からは紫キャベツの呈色との類似性を指摘されました.

もうひとつ,植物の色素に関する質問を.
英文学などでイースターエッグをセイヨウオキナグサの花弁で染めるという話が出てきます.この花は紫が普通のようですが,卵は緑色に染まるとのことです.

1)どのようにして染めるのでしょうか?一緒に煮るのでしょうか?何か添加するのでしょうか?
2)花びらが紫なのに,なぜ緑になるのでしょう?
3)セイヨウオキナグサの花の色素はどのようなものか,分かっているのでしょうか?
4)日本のオキナグサでも同様に染まりますでしょうか?

我が家の庭にまもなくセイヨウオキナグサの花が咲きます.トライしたいと思っております.よろしくお願いいたします.
佐倉 想さま
 みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。私のうっかりミスでお返事が大変遅くなってしまいました。申し訳ございませんでした。
頂いたご質問の回答を、花の色素の研究をなさっておられる名古屋大学の吉田久美先生にお願い致しました所、以下のような回答をお寄せ下さいました。吉田先生、ご自身で実験はやっておられないようですが、ご参考になれば幸せです。遅くなりましたこと、重ねてお詫びいたします。



【吉田先生のご回答】
新田様

ご質問をありがとうございます。
私自身は、初めてお聞きしましたので考えた範囲でお答えしており実験はやっていませんので、ご理解ください。

1)イースターエッグは一般的には、ゆで卵か、中身を出した卵に食酢と食紅 (食用着色料)をまぜて、浸すだけのようです。場合によっては、食酢は入っていないレシピ もありました。
ですから、花の絞り汁か食酢で抽出した液を硝子容器か琺瑯容器に入れて、卵 を浸せばよろしいかと。

2)もし、食酢を使った場合、アントシアニンは赤色で安定化されます。ま た、中性の場合、オキナグサの色素はさほど安定なものでは無いため、退色が起きる可能性があります。炭酸カルシ ウムが主成分ですから、若干アルカリ性だと考えます。アントシアニンがアルカリ性になると、一旦青 色を呈しますが、その後分解して、黄色のカルコンへと変化します。これと残っている青色色素がまざると緑色になるのではと考えます。

3)色素の構造については、日本のオキナグサの色素が、1997年のPhytochemistry 誌 47巻105-107ページに、当時熊本大学理学部の吉玉国次郎 先生、石倉先生らのグループにより論文発表されています。ペラルゴニジン3-(2''-(2'''-カフェオイルグルコシル))ガラクトシドと報告されています。
多分、セイヨウオキナグサもペラルゴニジン系の色素かもしれません。アネモネも近いようです。

4)多分、アントシアニンで染めるということでしたら、同様になるかと考えます。
食酢を入れる、入れない、花を何で抽出するか、抽出液をすぐに卵にひたすか、少しおいてからにするかなどいろいろためされたらいいのではないかと思います。

吉田 久美(名古屋大学大学院情報科学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2012-06-26