一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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花の色と葉の色の関係

質問者:   一般   ゆんちゃか
登録番号2632   登録日:2012-04-25
バラを育てています。バラの新芽はどれも赤味を帯びていることが多いようです。他の質問からその理由を知りました。また、花弁は葉が変化したものであることも知りました。

それなら花の色と葉の色は、関連していると考えるのが自然だと思います。つまり、赤い花をつけるバラの葉は赤味が強く、白っぽい花の場合は、赤味が薄いはずではないでしょうか。

しかし、実際はそうとは限りません。白〜薄緑の花をつけるバラの葉が赤味強く、赤紫の花の葉に、肉眼では全く赤味を感じられないことがあるのです。なぜでしょうか。

また、新芽に赤味が少ないバラは、赤味の強いものより日陰むきなのでしょうか。
ゆんちゃか様

質問コーナーへようこそ。歓迎致します。バラを育てていらっしゃるとのこと、世話が大変でしょうね。立派な花を沢山咲かせるためには肥料や剪定のどの問題だけでなく、アブラムシや黒星病などの病気の対策もしなければならないでしょう。しかし,きれいな花が咲くと、世話のしがいがあって嬉しいですね。ところで、赤い新葉のことや、花と葉が相同器官であること等は勉強なさっているようですので、ご質問の内容に限ってお答えいたします。
 花に限らず植物体の色は細胞に含まれている様々な色素によって決まります。色素の種類等のことは登録番号2040, 1640,1664 などの回答を呼んで下さい。どんな色素が作られるのかは、遺伝子によって決められています。バラに自然では青い色の花ができないのは、青い色素を合成する能力がないからです。つまりそのための遺伝子を持っていないからです。そこで、青い花の植物から、青い色素の合成に関係する遺伝子を、遺伝子組み換えでバラに入れてやることによって、はじめて青いバラができたことはご存知かと思います。カーネーションやコチョウランの場合も同じです。バラ(他の園芸植物の花も)の花(花弁を意味することにします)の色の種類は沢山ありますが、単一の色素だけで決まっているのではなく、複数の種類の色素とその含有量が、色と色合いを決めています。花はもともと葉からできたた器官ですから、葉も元来その植物の花の持つ色素に関係する遺伝子を持っているはずです。また、花も葉が持っている葉緑素などの色素を合成する遺伝子を持っていても不思議はありません。しかし、葉が花という器官に分化したのは進化の過程を4億年以上も遡ることになります。その長い進化の間に、花は形態的(構造的)にも機能的(生理的)にも葉とは違った自立性のある器官になってしまったのです。したがって,現在、花では葉と比べて失われた遺伝子もあるでしょうし、機能しなくなった遺伝子もあります。花にも葉緑素の遺伝子はありますが、ふつうは発現しません。でも時々突然変異的に、先祖帰りのように、緑の花弁や、花弁が葉状になった変わりものができます。仮に花と葉が全く同じ遺伝子情報を持っていたとしても、花と葉とでは、その情報の利用の仕方が同じでないと思って下さい。だから、新葉の色と花の色とは直接関係がありません。
なお、白い花は白い色素があるのではなく、全く色素の合成をする能力がないからです。白く見えるのは気体が多く含まれる植物組織の中で、光は乱屈折する結果白っぽく見えるのです(登録番号1678を読んで下さい)。ビールの泡やガラスの引っ掻き傷が白く見えるのと同じです。
「新芽に赤味が少ないバラは、赤味の強いものより日陰むきなのでしょうか」という質問ですが、そういうことはないと思います。バラは陽光を好みますので、日当りの良い場所で育てるのが普通です。日陰を好むバラというのは聞いたことがありません。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2012-05-14
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