一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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呼吸に使われる酸素の経路について

質問者:   一般   kuni
登録番号2633   登録日:2012-04-26
作物の生産性を向上させるため、光合成を促進させる管理が重要ですが、作物の生育全体を見た時に、呼吸についても考えなければならないと思います。

光合成は主に葉で行われ、原料となる二酸化炭素は葉の気孔から取り込まれ、水は根からの吸水によることは理解できています。
そこで質問ですが、

①この時に生成される酸素は、そのまま気孔から外へ排出されるのでしょうか。それとも、呼吸に使用されるのでしょうか。
②そもそも呼吸で使用される酸素は、どこから取り込まれますのでしょうか。
また、生長点や茎、根など気孔を持たない組織への酸素の運搬方法はどのように行われますでしょうか。
根でも酸素を取り込むというのは聞いた事があります。根が必要とする酸素は根が取り込むのでしょうか。
③気温が高くなると呼吸量も増加します。酸素の取り込み口から消費する場の距離が長い場合、酸素の移動速度によっては、供給不足(酸欠)になるのでしょうか。

以上よろしくお願いします。
Kuni 様

ご質問をありがとうございます。
この質問には東京大学の野口先生が回答文をご用意くださいました。ご参考になさってください。



【野口先生からの回答】
葉の光合成反応で生成される酸素の一部は、葉の呼吸反応で使用されます。呼吸反応で消費されなかった酸素は、気孔から外に排出されると思います。
気孔のない組織では、酸素は組織の表面から吸収されます。酸素は液体中では気体中に比べて、移動速度がかなり遅くなります。そのため、組織内に大きな細胞間隙(細胞と細胞の間の隙間)がある場合には、酸素は主に細胞間隙の部分で運ばれます。細胞間隙がない場合には、細胞中を移動します。
多くの植物では、根が必要とする酸素は、土壌中で根が吸収した酸素です。ヨシやイネなどよく水浸しになるような所に生える植物では、茎や根に細胞間隙が多く見られます。
そのような植物では、葉で吸収した酸素が茎や根に輸送されて使われているようです。ヨシやハスなどでは、葉が暖まると葉内の細胞間隙内の圧力が高まり、圧力差で根に輸送されるので、輸送効率が高いようです。酸素の吸収する場所から、消費する場所が遠い場合には、酸素の供給不足になります。
以上です。不明な点がございましたら、質問してください。

野口 航(東京大学大学院理学系研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2012-05-08
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