一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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植物の水分貯蔵能力

質問者:   一般   jab
登録番号2641   登録日:2012-05-05
初めて質問させていただきます。

ブーケなどに使われる葉物を作っています農家です。

勘違いかもしれませんが、水をよく与えた植物より、少し水を抑えた植物の方が、収穫後、萎れにくいように感じています。

その際、植物の水分の貯蔵能力というのは、どのように決まるのかという疑問を持ちました。

今回の質問は、

・植物は水分をどのように貯蔵しているのか。
・同じ植物品種でも、水分貯蔵能力は変わってくるのか。変わるのであれば、どのような要因で変わるのか。


宜しくお願い致します。
jab 様

ご質問をありがとうございました。
植物の種類によっては、ムラサキオモトのように表皮下の細胞層が貯水組織として機能している場合や、リュウゼツランなどの多肉植物の内部の細胞層の場合など顕著な貯水組織が発達している場合があります。しかし、多くの植物においては葉を形成している細胞や細胞の間隙に水分が貯えられます。 ところで、葉のしおれの原因となる水分の蒸発は、ほとんどの場合、特殊に分化した表皮細胞(気孔)の間隙を通して行われているものと考えられています。そんな訳で、気孔の機能について詳しい九州大学の島崎先生に回答をお願いしました。下記の回答文をご参考にして下さい。



【島崎先生からの回答】
おそらく、葉の表皮にある気孔の開き具合の違いが、しおれに反映されていると思います。葉の中の水分は気孔を通して、大気中へ蒸発(蒸散といいます)して行くからです。近くに植物(柔らかい葉をもつもの)があれば、ひとつは太陽光のもとに、もう一つは暗いところに1時間くらいおいたのち、それぞれから葉を切り取って部屋の中に置いてみて下さい。光の当たった葉は早くしおれ、当たらなかったものはしおれにくいはずです。蒸散によって水が逃げて行く為で、光のもとに置いたものは気孔が開いており、暗いところのものは気孔が閉じています。
 
本題に入りますが、植物に水を与えずに乾燥条件に置いておくと、葉の中に植物ホルモンのアブシジン酸という物質が蓄積します。このホルモンは気孔を閉じさせる働きがあり、水の消失を抑えます。これに比べて、水をたっぷり与えたものでは、アブシジン酸が少ないので気孔は閉じにくいでしょう。つまり、葉の水分は気孔を閉じさせることによって貯蔵することができます。

同じ品種でも、それまで置かれた環境によって水分の貯蔵能力が大きく変わります。お書きのように水を与えるのを抑えておけば、アブシジン酸が働いて葉の水貯蔵力は増大し、水を沢山与えておけば水の貯蔵能は減少するはずです。もし、アブシジン酸を手に入れることができれば、それを噴霧しておけば、葉はしおれにくくなるはずです。

島崎 研一郎(九州大学大学院理学研究院生物科学部門)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2012-05-11
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