一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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空気中からの栄養摂取

質問者:   教員   高橋
登録番号2660   登録日:2012-06-07
植物は空気中から栄養を吸収することができるのか教えていただきたいと思っています。ここでお聞きしたいのは、地中の窒素固定菌により一度固定されたものを吸収する、というのではなく、植物が茎から出した気根などにより、空気中の栄養を吸収するか、ということです。
トマトやエアープランツと呼ばれる植物が空気中から栄養を吸収する、という記述を目にしたのですが、その場合、どのような栄養元素を、どのような形態で吸収しているのでしょうか?
よろしくお願いいたします。
高橋 さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
植物の養分吸収ではふつう根が主要な吸収器官として働いていますが、葉面からも栄養分を吸収することができます。植物栄養肥料学の分野ではこの現象を葉面吸収と言っており、栄養供給手段として養液を直接葉に散布する葉面散布は実用的な施肥技術となっています。特に微量元素欠乏の場合には、もちろん土壌改良が必要ですが、同時に微量元素の葉面散布を行うと効果が高まることはよく知られていることです。多量元素ではN源に尿素を、P源にリン酸塩などの葉面散布を行う場合もありますが、特徴の1つとして有機化合物である尿素は葉面からよく吸収されることが知られています。さらに、尿素と他の栄養元素の併用散布は、他の栄養元素の単独散布よりもその吸収を高めるとされています。葉面吸収のメカニズムに関する研究は少なく、はっきりした仕組みは明らかでありませんが、根においては栄養分に比較的特異的な輸送体がエネルギーを使って積極的に吸収していますので、葉においても同じような輸送体があることは十分考えられます。しかし、未知の吸収機構があることを否定することはできません。



【追加質問】

液体に溶けた栄養元素を葉面から吸収することは何となく想像できるのですが、そのように葉面散布しなくても、空気中の栄養元素を直接吸収することは可能なのでしょうか。例えば空気中の水蒸気が葉面で凝縮するときに空気中の栄養元素がそこに溶け込み、それを吸収している、と考えることもできるのでしょうか?


【追加質問回答】

「空気中の栄養元素」の存在状態を考える必要があります。植物の栄養分はすべて化合物です(根粒菌は気体状窒素を利用できますが、植物にはそのような活性はありません)。ということは空気中にある化合物はそれ自体の微粒子あるいはそれが空中浮遊物に付着したもの、あるいは微細水滴に溶解したものとなります。植物は微細粒子といえども粒子を直接吸収することはできず、水溶液中のイオン(あるいは中性物質)のみを吸収します。葉面散布された栄養分は「空気中の水蒸気が葉面で凝縮するときに空気中の栄養元素がそこに溶け込み、それを吸収している」のです。

今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2012-06-28
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