一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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挿し木は栄養生殖か?

質問者:   大学生   キクチェンコ
登録番号2665   登録日:2012-06-13
挿し木について質問させて下さい。

挿し木は栄養生殖の1つであるとする文献をいくつか目にしました。具体的には、例えば教科書の出版社でもある啓林館さんのウェブサイト(http://www.keirinkan.com/kori/kori_biology/kori_biology_1_kaitei/contents/bi-1/2-bu/2-1-1.htm)には、「栄養生殖,つまり挿木など」という記述が見られます。
しかし、私はそれに違和感を感じました。それは以下の2つが理由です。

まず、挿し木は園芸のために人為的に行われたり、強風で枝が折れてそれが地面に刺さったりして別個体が生じることだと思います。しかし、それは外部からの力がかかってはじめて起こることであり、生物が自発的に行っていることではありません。これを生殖の1つと見なして良いのでしょうか?
次に、栄養生殖とはサツマイモ、ジャガイモに代表されるような栄養器官から殖えることであると手元の資料には記されていますが、挿し木の時に用いる枝や茎は栄養器官と呼べるのでしょうか。イモのように特別に栄養を蓄えてある器官のようには思えません。そのため、栄養器官で殖えているのではないのだから栄養生殖とは呼べないのではないでしょうか?

以上のような理由で、挿し木を栄養生殖と見なすことに私は違和感を覚えました。実際はどうなのでしょうか?よろしくお願いします。
キクチェンコ様

ご質問承りました。

挿し木は栄養生殖と呼んで良いか。というご質問ですが、おっしゃるとおり、植物が自発的に枝を切って土に挿すわけではないので、「栄養繁殖」の方が妥当な表現ですね。実際に、岩波書店「生物学辞典(第4版)」でも「挿木」は栄養繁殖として記述されています。

挿し木の時に用いる枝や茎は栄養器官と呼べるのでしょうか。というご質問ですが、枝や茎や葉は花などの生殖器官と対応させて、栄養器官と呼びます。

お役にたてば幸いです。
JSPP広報委員長、基礎生物学研究所
長谷部 光泰
回答日:2012-06-25
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