質問者:
教員
カズ
登録番号2667
登録日:2012-06-19
教員として高校で光合成と呼吸を教えているときに疑問を感じ、質問させていただきます。植物のATP利用
植物は、光合成反応でATPをいったん作り、そのATPを利用して無機物から有機物を合成し、さらに、合成した有機物を無機物に分解してATPを合成し、そのエネルギーを様々な活動に利用しているとおもいますが、なぜ、なぜいったんつくったATPを直接利用せず、有機物の形で保存するのでしょうか?
光エネルギーを使い合成したATPを有機物の合成を挟まず、直接利用して生活しても良い気もするのですが。。。
ATPの安定性や、進化的な理由がおありでしたら教えていただけるとありがたいです。何卒よろしくお願いします。
カズ さん
ご質問を有り難うございました。
この問題には、細胞内小器官(葉緑体とミトコンドリア)の存在と、それらの小器官を外包する膜の透過特性が深く関わっております。ご存知のように、細胞内でATPが合成される部位は、(1)細胞質(解糖)、(2)ミトコンドリア(呼吸)、(3)葉緑体(光合成)の3か所ですね。葉緑体で営まれる光合成では、チラコイド膜上のATP合成酵素が働くことにより、ATPがストロマ画分に貯まり、有機物合成の主な過程はこの画分で進行します。しかし、葉緑体の外包膜はATP透過の特性を備えていないため、ストロマ画分に蓄積したATPが細胞質に輸送されることはありません。ところが、エネルギーに富んだ光合成産物であるトリオースリン酸は包膜上の輸送体(トリオースリン酸-リン酸輸送体)の働きで細胞質に送り出され、そこでエネルギー源・有機化合物合成素材として利用されます。これに対して呼吸の場合には、有機化合物に含まれるエネルギーがミトコンドリア内膜上のATP合成酵素の働きでATPの形で固定されますが、ミトコンドリアの外膜にはATP・ADP交換輸送体が備わっており、ATPはADPと交換される形で細胞質に送り出されます。要約すると、ご質問の問題にはオルガネラの外包膜上に存在する輸送体(タンパク質・酵素)が関わっており、このことには細胞の進化が深く関係していると言えます。
ご質問を有り難うございました。
この問題には、細胞内小器官(葉緑体とミトコンドリア)の存在と、それらの小器官を外包する膜の透過特性が深く関わっております。ご存知のように、細胞内でATPが合成される部位は、(1)細胞質(解糖)、(2)ミトコンドリア(呼吸)、(3)葉緑体(光合成)の3か所ですね。葉緑体で営まれる光合成では、チラコイド膜上のATP合成酵素が働くことにより、ATPがストロマ画分に貯まり、有機物合成の主な過程はこの画分で進行します。しかし、葉緑体の外包膜はATP透過の特性を備えていないため、ストロマ画分に蓄積したATPが細胞質に輸送されることはありません。ところが、エネルギーに富んだ光合成産物であるトリオースリン酸は包膜上の輸送体(トリオースリン酸-リン酸輸送体)の働きで細胞質に送り出され、そこでエネルギー源・有機化合物合成素材として利用されます。これに対して呼吸の場合には、有機化合物に含まれるエネルギーがミトコンドリア内膜上のATP合成酵素の働きでATPの形で固定されますが、ミトコンドリアの外膜にはATP・ADP交換輸送体が備わっており、ATPはADPと交換される形で細胞質に送り出されます。要約すると、ご質問の問題にはオルガネラの外包膜上に存在する輸送体(タンパク質・酵素)が関わっており、このことには細胞の進化が深く関係していると言えます。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2012-06-25
佐藤 公行
回答日:2012-06-25