一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物色素と紫外線

質問者:   高校生   mica
登録番号2669   登録日:2012-06-30
去年自由研究で植物色素が持つ紫外線を遮断する効果について調べ
植物から抽出した植物色素液が紫外線を遮断することを確認できました

今年は去年の内容を深めた研究をしようと考え、いろいろ調べていると

・UVAはアントシアニンの合成を促進する
・高山では花の色が濃いのは紫外線量が多いからだ

ということを知りました

そこで質問なのですが

1.UVAは植物色素に吸収されないのでしょうか
2.紫外線量が多いとなぜ花の色が濃くなるのでしょうか
3.標高が低いところに生息する植物でも紫外線をあてると花の色が濃くなるのでしょうか

よろしくお願いします
mica さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
紫外線とアントシアニン系色素形成についてはたくさんの質問項目がありますが、まず登録番号2544、2143、2097,1942などをお読み下さい。ご質問には順にお答えします。

1.アントシアニンはUVAを吸収します。UVAは波長400〜315nmにある光とされています。アントシアニンは光を吸収する色素アントシアニジンに糖がついた配糖体です。アントシアニンジンは500nm付近の可視光を吸収する色素本体ですが、これが配糖体となると可視光に加えて330nmから280nmの範囲を吸収するようになります。その最大吸収の波長は水酸基の位地、数によって異なります。

2.アントシアニジン自体の生合成過程には紫外線を必要とする反応なありませんが、生合成に関わる酵素遺伝子群の発現を促進するMybという別の遺伝子の発現が紫外線で促進されます。つまり、Mybという転写制御遺伝子の発現が紫外線で増加すると、その結果としてアントシアニジン生合成酵素の遺伝子群の発現が促進されて色素合成が活発になり花色が濃くなるのです。

3.これまでの解説から、すでにお分かりと思いますが、低地でも紫外線を当てればMyb遺伝子の発現がましますので、アントシアニン色素の合成も増加し、花の色は濃くなるはずです。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2012-07-06